佐藤 学生は岡田氏のどのような部分に共感するのでしょうか。
ナンダ 私の授業を履修している学生の多くは、ハーバードビジネススクールに入学前、あるいは在学中に起業した経験がある人たちです。また卒業後も何らかの形でスタートアップ企業に関わっていたいと希望しています。
学生は岡田氏のキャリアパスに興味
たとえば、「経営コンサルティング会社を退職して、ハーバードビジネススクールに入学したけれどもまだ学費ローンが残っている。経営コンサルティング会社からは卒業したら戻ってきてほしい、と言われている。でも自分には起業したいという夢がある。どうしたらいいのだろうか」というような悩みを抱えている学生は多いのです。こうした学生は、大蔵省、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て起業した岡田氏のキャリアパスにとても興味をもっています。彼は自分の情熱のほうを優先して安定した職を辞めて、よりリスクの多い生き方を選んだからです。
「卒業後、宇宙事業で起業したい」と思っている学生たちにとっても、岡田氏のキャリアは興味深いものです。中にはハーバードビジネススクールで経営学修士(MBA)取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)のベンチャーファンド、MIT Engineから出資を得て、実際に起業した学生もいます。彼らは在学時からすでに岡田氏のことを知っていました。宇宙事業ベンチャーに携わっている人たちというのは意外とつながっているものなのです。
佐藤 「宇宙のごみを掃除する」という事業アイデアを、なぜ日本人起業家が発想したと思いますか。
ナンダ それは面白い質問ですね。これまで考えたこともなかったです。もしかしたら日本人は周りの環境に対する責任感が強いのかもしれませんね。とても印象的だったのは、「2018 FIFAワールドカップロシア」で、日本人選手がロッカールームを完璧に清掃し、サポーターが観客席のごみを集めてまわったことです。「清掃」は日本の文化に根付いている習慣なのでしょう。そう考えると日本人起業家が「宇宙も掃除しなければ」と思ったのも自然なことかもしれません。
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理。同校のMBAプログラムにて「アントレプレナー・ファイナンス」を教える。主にベンチャー企業が円滑に資金を調達する方法や、金融機関、企業の研究開発部門、政府関係者が効率的に有望なビジネスアイデアやテクノロジーに投資するための方法を研究。多くの企業・団体のアドバイザーを務め、起業家には財務戦略、慈善投資家には貧困問題を解決するための起業支援策について助言している。
「ハーバードが学ぶ日本企業」記事一覧