宇宙の掃除に金が集まる ハーバード注目の日本発VBハーバードビジネススクール教授 ラマナ・ナンダ氏(上)

佐藤 学生からの反応はいかがですか。

ナンダ 16年からずっとアストロスケールの事例を教えていますが、とても評判がいいです。

スペースデブリ(宇宙ごみ)が地球にとってこれほど大きな問題であることを知っている学生はほとんどいません。この問題について考えるだけでも面白い、という感想をよく聞きます。

またこの事例からは、社会課題解決型のスタートアップ企業が直面する問題も学ぶことができます。既存ビジネスの範囲内でも起業を成功させるのは難しいのに、アストロスケールは誰もやったことがない事業アイデアをもとに資金調達して、企業として成長していこうとしています。アストロスケール創業者の岡田光信氏は「最も難易度が高い」課題を解決していくことを決断したのです。

この事業は地球にとって必要な素晴らしい事業だということもわかっています。しかし、最も大きな問題は、「誰が何のためにお金を出すの?」という点です。

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。日本ユニシス社外取締役。

佐藤 アストロスケールの創業者、岡田光信氏を起業家としてどのように評価していますか。

ナンダ 私たちの授業では、「この人は起業家としての資質がある」とか、「この人よりもこの人のほうが起業家としての才能がある」というような議論はしません。私たちが注目するのは、「この起業家がいかにリスクとリターンに向きあっているか」「いかに効果的にリスクを軽減・回避しているか」です。

リスク管理に優れた起業家

岡田氏は起業家として3つの点で優れていると思います。

1つめは、リスク管理です。岡田氏は最初から大事業を打ち立てず、小さく始めて、着実に大きくしていく方法をとっています。パートナー企業、投資家、政府など、ステークホルダーの数を増やし、リスクを軽減しています。たとえば「ルナドリームカプセルプロジェクト」(LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT =世界中の子どもたちから集めた夢を刻んだメッセージプレートとポカリスエットの粉末をタイムカプセルに乗せて、月面まで届けるプロジェクト)では、大塚製薬、日本の大学などと組むことによって、資金や人材などをうまく調達しています。

2つめはチームづくりです。岡田氏は、エンジニア、科学者、政府関係者、企業関係者など優秀な人材を集めたチームをつくることにも成功しています。

3つめは本社を置く国の選択です。創業当初、本社をシンガポールに置いたのは、とても合理的で賢い選択であったと思います。コモンズである宇宙を清掃するというアストロスケールの事業は、国際政治的な問題をはらみます。中立的な立場にあるシンガポールに拠点を置いたことで、ロシア、アメリカ、ヨーロッパ諸国ともビジネスを展開しやすくなったのです。(注:19年2月に本社を日本に移転)

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