Official髭男dism ヒゲダンで最もかっこいい曲完成

日経エンタテインメント!

藤原 ブラスのアレンジも目から鱗でした。最初はトランペットを3本重ねるつもりでしたが、「4本にしてみたら?」とアイデアをいただいて。同じ楽器が複数重なるとピッチが微妙にずれるので、それによって独特のニュアンスが生まれる。いつも聴いてるブラス隊の音と違うものになりました。

小笹 今作では、ホーンがオブリガード(主旋律を引き立てるために用いられる印象的な伴奏)の役目を担っていたので、ギターに求められるのは力強さかなと。なので、これまでの楽曲で一番低音感にこだわってベースと一緒になるイメージで作りました。また、ひずみの利いたディストーションギターで暴れるのがヒゲダンの特徴なので、友達から借りたビンテージのレスポールを使っています。

韻は母音よりリズム重視で

(写真:フジイセイヤ)

「歌詞は球児だけでなく、全人類に向けて書いた」と誇らしげに語る藤原。スケールの大きなテーマを編むうえでメンバーの言葉が支えとなり、作詞の面でもステップアップできたようだ。

藤原 この曲ができた時、「きっとものすごい曲になる」と感じましたが、『熱闘甲子園』や蔦谷さんに出逢えたことで、そのときの想像を超えるスーパーアンセムになりました。ありがとう地球!

全員 あははは。

藤原 完成までは毎日iPadに向かい、書いては消しての繰り返し(苦笑)。『宿命』の歌詞案は全部で11稿まで作りました。特にサビはかなり悩んで、レコーディング当日にやっとできました。

楢崎 マイクで録って一番気持ちいい響きはどれだろうって歌入れ直前まで悩んでたよね。録音環境などちょっとしたことで変わってくるから、実際に歌ってみないと分からないことも多いんです。 

松浦 作詞しているさとっちゃん(藤原)は完全に自分の世界に没入して歌詞を書き上げてくるので、僕らは響きの良さといった点を客観的に判断してアドバイスなどをしていました。

小笹 こんなにたくさん歌詞案を書くことになったのは蔦谷さんの影響も大きいって言っていたよね。洋楽的なブラスやリズムを取り入れたサウンドに仕上がった時に、「洋楽において韻を踏まないなんてありえない。シェイクスピアの詩集は韻を完璧に踏んでいる」って言われたんでしょ?

藤原 そう。「ここまでかっこいいサウンドを作れたなら、歌詞も突き詰めるべきだ」って。なので、書き直しては夜中に蔦谷さんに送りつけて(笑)。サビの「奇跡じゃなくていい/美しくなくていい」「切れないバッテリー/魂の限り」は、歌入れ直前にようやく絞り出た一節です。韻を踏みながらも、聴いてくださる人の宿命を応援し、もちろん球児たちの背中も押せる、より良い歌詞になったと思います。

小笹 韻を踏むというのは、母音が合えばいいというわけでもない。むしろリズムが大事だったりするから、字面で見ただけじゃ分からないんですよ。それもあって時間がかかったけど、そのかいあって、ヒゲダン史上一番かっこいい曲ができたと思っています。

松浦 7月に武道館で演奏したとき、今このタイミングでこの曲を出せてよかったと思いましたね。今後、僕らがもっと大きなステージに立った時に、なくてはならない曲になるなと。

藤原 僕らの音楽はブラックミュージックにルーツがあるので、海外のサウンドに憧れがあるんです。今回は蔦谷さんと組めたことで、邦楽にはあまりない超低音域にまでこだわった曲を作れました。これなら、低音が弱く出がちなストリーミングで聴いたとしても、迫力がしっかりと伝わる1曲になったと自負しています。

楢崎 ストリーミングのお陰で、海外で僕らの音楽を聴いてくれているファンも多いしね。僕らの目標の1つに海外でのライブがあるので、SNSでコメントをくれることが多いアジア圏を、まずはツアーで回れたらいいですね。

小笹 あと国内では、自分たちで主催するフェスをいつかやりたいと思っています。

『宿命』
『2019ABC夏の高校野球』応援ソング/『熱闘甲子園』テーマソングとして書き下ろされた、今夏を彩るアンセミックなナンバー。スタジアムの観客席にいるかのように高らかに鳴り響くホーンに圧倒されるイントロ、自らの宿命に立ち向かう意志の強さを感じさせる歌声に心が震える。ジャケットは、藤原の左手をデザインしたもの。(ポニーキャニオン/700円・税別)

(ライター 橘川有子)

[日経エンタテインメント! 2019年9月号の記事を再構成]

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