ベンツ・ポルシェ…欧州バッテリーEV車、日本に続々

「いや、EVに充電する電気を作る過程でCO2がじゃんじゃん出るから、ゼロってことはないでしょう」という話もあるにはあるわけですが、現状そこは不問に付されています。

まあ、ノルウェーのように再生可能エネルギーで電気をほとんど賄えるところや、フランスのように原発での余剰電力を有効活用したいところもあり、電力事情はそれぞれです。加えて欧州の都市圏は、現在、古いディーゼル車の排出物が主因とされる光化学スモッグなどの大気汚染が大きな課題となっています。裏返せばBEVがその問題を解決するシンボリックな存在として注目されやすい環境です。

しかし、それらの事象の中で少し目立たなくなっているだけで、CO2の問題は、この先確実に、今以上に重大かつ喫緊な課題として、採り上げられるときがきます。その際にはBEVも「どのように作られた電気で走っているか」という問題、さらには「製造時や廃棄時のCO2負荷はいかばかりか」という指摘も避けることはできなくなっているでしょう。ちなみに車両生産から使用、廃車までの生涯CO2排出量について、いくつかの自動車メーカーはアカデミアなどと共同で試算したデータを発表していますが、最終的な結論は内燃機優位かBEV優位かで割れています。

急激だった中国の姿勢に変化が

環境問題が政治的課題となっているのは中国も同じ。実は欧州ブランドのBEV戦略が活発化した2つめの理由は、その中国の政策によるところがあります。

ご存じの通り、中国の都市部での大気汚染問題は欧州のそれどころではない大変なもの。その主役たるPM2.5は自動車というよりも工場や発電施設などで石炭を多用する、その排出物による影響が大きいのですが、人民はその辺を一緒くたにしつつ、政府への不満を募らせ続けてきました。

そこで中国が掲げたのが新エネルギー車=NEV規制です。

今年導入されたその内容は、各社の乗用車販売のうち10%をBEVやプラグイン・ハイブリッド車=PHEVにできなければ、その充当分をクレジット購入するという実質的なペナルティーが課せられるもの。中国政府としては、この相当強引な規制により、BEVの普及を早めて環境問題への取り組みを人民にアピールすると共に、中国の自動車産業の国際競争力を高めて、あわよくば次世代自動車の覇権を握るゲームチェンジの好機にするという、2つの思惑が込められていたことは言うまでもありません。

欧州ブランド、特にドイツ系は全販売台数に対して中国市場への依存度が3~4割に達しており、商業的に中国の意向は無視できない状況です。鮮明なBEVシフトの背景には、中国のこのNEV規制があることは間違いないところです。

ところがこの7月、当局はこのNEV規制の見直しを図り、BEVやPHEVではない普通のハイブリッド車=HEVへの優遇も検討しているとメディアが伝えました(記事「中国、ハイブリッド車優遇 環境車規制を転換へ」参照)。

価格や実用面でまだまだ課題の多いBEVを強引に大量普及させることは現実的ではなく、それでも環境改善を考えるのなら価格のこなれたHEVに一定のボリュームを担わせつつ、徐々にBEVへと移行するほうが理にかなっているという、クルマ屋的な視点でみると至極まっとうな筋論です。

同時期にトヨタがHEV技術特許の開放をアナウンスしたのは関係あるのかと問われればそこは関係者のみが知るところですが、ただ、この流れはドイツ勢にとっては想定外だったかもしれません。

BEVは二極化へ

今後バッテリー技術やコストのブレークスルーが起こらない限り、BEVのトレンドは二極化が進行していくかと思います。

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