デキる社員はフリーランスで タニタ式「働き方革命」タニタ 谷田千里社長(上)

「改善策を探るために、全社員に業務命令として無理やりその商品とサービスを使わせたところ、社員の平均体重や体脂肪率が減り、医療費も1割近く減りました。この結果にヒントを得て、企業や自治体向けにパッケージ化したのが『タニタ健康プログラム』です。これが売れれば、自社の利益になるだけでなく、日本全体の医療費適正化、財政健全化に貢献できる。結果的に増税という最悪の事態の回避にもつながると考えました」

優秀な人に働き続けてもらうためには「報われ感の最大化」が必要

――タニタの仕事を続けながら独立できる新しい働き方のアイデアも就任当初から温めていたのですか。

「これも最悪の事態に備えるという発想から生まれました。とりわけ重要なのは人です。組織に利益をもたらしているのは、優秀な2割の人であり、会社が危機に陥ると、その2割の人から辞めていくとよく言われます。であればリーダーとして、優秀な人に働き続けてもらえる仕組みを作ろうと考えました」

「会社が危機の時にも、一緒に乗り越えようと思ってもらえるかどうか。その鍵を握るのは『報われ感』です。報われ感とは、自分の能力がしっかりと評価され、貢献に見合った報酬が十分に得られていると実感できること。さらに優秀な社員であればあるほど、会社に『働かされている』のではなく、自由に主体的にやりたいと思える仕事に取り組めているかどうかも重視するはずです。働く人が主体性を発揮できるようにすることこそが『真の健康経営』だと考えています」

谷田社長はポケットマネーでお菓子会を開き、社員との交流を深める

――「報われ感」にこだわったのはなぜですか。

「私自身が『報われていない』という思いでもんもんとした時期があったからです。私はやりがいを感じていたコンサルタントの仕事への未練を振り切って、タニタに入りました。でも、当時の人事担当の役員には、新卒扱いということで、前職よりはるかに安い給与を提示されました。最初からゴネるのはよくないと思い我慢はしたものの、働き始めてから常に結果は出していましたから、『報われていない感』でいっぱいでした。悔しさをバネに発奮したので、今となっては人事担当役員に感謝していますが、私自身は、貢献に対してきちんと報いるリーダーでありたいと考えました」

社員の個人事業主への移行を会社が支援

――新しい制度では、社員は希望すれば、個人事業主に移行し、時間や場所の制約なしに働けるそうですね。

「はい。その移行を会社が全面的にバックアップします。仕事も、最低でも3年間はタニタの仕事を続けられるよう保障します。その後は引き続きタニタの仕事を100%請け負うのもよし、タニタの仕事を減らし、その分スキルを生かして他社の仕事の請け負うのもよし。すべては自分の裁量で決められるようにしています」

「フリーランスになるのに一番ちゅうちょするのは、社会保障が心もとない点だと思います。そこで社員時代に会社が負担していた社会保険料も含めた『人件費』の総額をキャッシュで支払う形にしました。そうすれば、個人でさまざまな保険や年金に入ることも可能です」

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