(沢田)本当に面白い。これからはますます、人と人とのヒューマンタッチが大切なので、地域の人たちと楽しいことをやろうと思って、全社あげて取り組んでいるところなんです。
僕は社長になってから、全国で700店舗ほど見て回っています。東京で暮らしているとわからなくなってしまうのですが、同じファミマでも地域によって、もっというと店舗ごとに本当に違うんです。だから、その地域で一番受け入れられる店舗を作るには、地域を知っているオーナーさんと一緒になって考えるしかありません。
兵庫県の淡路島で最近面白いことをやったんですよ。これまで、うちの淡路島担当の社員たちは神戸に住んで、毎日、明石大橋を渡って淡路島まで通勤していたんです。でも、もっと地域に入り込むため、社員たちは淡路島に引っ越しました。すると、回りにどういう人が住んでいて、どんな工場があって、あの会社の創業日はいつかとか、社長の人柄とか地域のことをより深く知るようになった。すると、売り上げがじわじわと上がってきたのです。
今までは大量出店で規模を拡大してきましたが、これからはとにかく地域だなと思っています。
でも、スナックにとまでは考えなかったなあ。非常に面白いです。
10歳の息子を育てながら法政大に通っています。大学に入学するとき、子どもをちょっとだけ預けられる民間の学童保育を探しましたが、スポット利用できる民間の施設はすごく少ないんです。しかたなく、今は週5日通う子たちと同じ料金を払って、週に2日、1時間ずつだけ預けています。そこで、放課後の短い時間だけ、ファミマのイートインコーナーを子どもたちの居場所として活用できないかと考えました。
ファミマにとっては、大きな社会貢献になります。子どもの居場所があれば、子育て世代の育児の負担は軽くなり、働きやすくなります。宿題のお手伝いサービスも展開すれば学力格差の解消にもつながります。地域社会の再生にも効果があると考えます。ただ、課題もありそうです。託児人員をどう確保するか、イートインスペースの広さの問題や、地域によってスペースの有無にばらつきがあること、普段イートインスペースを使っている顧客の理解が得られるか、などが課題でしょう。でも、学童保育を利用する児童が102万人にのぼる世の中ですから、潜在的な需要は相当大きいのではないでしょうか。
(沢田)間違いなくニーズはあると思います。そして、坂田さんがおっしゃるとおりの課題もあります。でも、課題を解決するのがリーダーの仕事なのでね。しっかり向き合ってみたいです。
仙台の店舗にちょっとしたスペースがあったので、3Dプリンターを置いてみたんですよ。子どもたちに見せるために。それがすごくウケたんです。この経験から、子どもたちが楽しむとか、親も一緒に来て楽しむようなイベントとかプロジェクトはいいなと思っています。
地域ごと、店舗ごとにどのようなニーズがあるかということは、もっと加盟店のオーナーさんたちに寄り添って何がベストかを一緒に考えていかなければなりません。コンビニの24時間営業問題が最近、取り沙汰されましたが、こうした課題をしっかり話し合えるような信頼関係を、本社と加盟店の間で作り上げていかなければと思います。