元早大ラグビー監督のコーチ術 指導者は弱み見せよ日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター 中竹竜二さん

2019/6/26

オシゴト図鑑

約10年前に早稲田大学ラグビー部の監督として全国連覇をなし遂げた中竹竜二さんの今の職業は、「コーチのコーチ」だ。指導者を指導するという日本では珍しい仕事。選手を指導する立場のコーチこそ、自ら学んで振り返る態度が必要という。ラグビーをはじめとしたスポーツのコーチやビジネスパーソンが対象だが、自分で自分を効率的に成長させていくための方法は学生にとっても参考になる。

「コーチのコーチ」とは、どういうオシゴトですか?

私の仕事上の正式な肩書は、正式には日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターです。コーチは選手を指導するプロですが、そのコーチ自身が自己研さんする機会はほとんどありません。コーチの導き役として学びの場をつくるのが私の仕事です。

競技のオフシーズンの時期にコーチを集め、研修を行います。優れたコーチに共通しているのは、自ら学び、変化にチャレンジする姿勢。課題を発見し、自己変革するための振り返りや傾聴といったスキルを習得してもらいます。コーチが学ぶ姿勢の手本を見せることで、選手もそれに習い、チーム全体が活性化するのです。

このアプローチがラグビーをはじめとするスポーツで実績が出たので、同じことをビジネスの人材育成にも行かそうと考え、チームボックス(東京都目黒区)という会社を立ち上げました。

実は先ほども、4社のリーダー候補の女性約20人に「セルフリード」をテーマにした研修を行ってきたばかりです。セルフリードとは、自分自身の内面を見つめ、日々の行動を振り返り、成長を続けていくための姿勢です。部下や後輩に教えようとする前に、自分自身を深く知り、学び続けることで、魅力あるリーダーになる。その意識づけをするためのグループワークを、半年ほどかけて行っています。

■中竹竜二さんのキャリアヒストリー
22歳(1996年)早稲田大学4年時にラグビー蹴球部の主将を務める。大学選手権準優勝。大学卒業後は、英レスター大学大学院に進学。社会学を学ぶ。
27歳(2001年)三菱総合研究所に入社。企業の組織運営の分析、リサーチに従事する。
33歳(2006年)清宮克幸監督の後任として、早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任。「日本一オーラのない監督」として、独自のリーダーシップを発揮し、07年度、08年度と全国制覇を達成する。
37歳(2010年)日本ラグビーフットボール協会初代コーチングディレクターに就任。「コーチのコーチ」としての活動を本格化する。
41歳(2014年)チームボックスを創業。企業向けにリーダー育成プログラムを提供する。食品、人材、医療など多業種の有名企業のコンサルティングに携わる。

なぜ中竹さんは、コーチのコーチが必要だと感じ、それになろうと思ったのですか?

早稲田大学在学中はラグビー部の主将を務めていました。卒業後、イギリスの大学院で社会学の研究をしていました。帰国して三菱総研で5年間働き、組織戦略の仕事に没頭していたのですが、お呼びがかかって2006年に早稲田大ラグビー部監督になりました。カリスマ的な名将だった清宮克幸さんを継ぐという難題に少し迷いつつ、「誰がやっても批判されるなら、自分のようなたたかれ役がぴったりだろう」と引き受けました。