安定志向だからベンチャー企業を選んだ――。SNSなどの領域で事業を展開するガイアックスで、26歳のときに最年少事業部長に就いた管大輔氏(29)は、なぜファーストキャリアに大企業ではなくベンチャーを選択したのか。キャリア論が専門の法政大学キャリアデザイン学部・田中研之輔教授が、管さんの流の勝ち筋の見つけ方を聞いた。
・ベンチャーなら社内競争が少なく、経験も早く積めるから社内外の評価を高められ、結果的に「安定」して働けると考えた
・歴史の浅い業界を選べば、社内で自分の価値を発揮できる可能性が高まる
・学生時代は色々なコミュニティーに入り、興味範囲を広げておくことが重要
早稲田ブランドに甘えていた自分を発見した
田中 管さんは早稲田大学教育学部から新卒でガイアックスに入社しています。私は早稲田で教えていた経験がありますが、大手志向の学生が多い印象でした。だからベンチャーに就職する人は珍しかったと思うのですが、大手企業は受けなかったんですか?
管 説明会は行きましたけど受けなかったですね。なぜかと言うと、安定とブランドについて考えたからです。僕はすごく安定志向なんです。そして究極的な安定って、会社に頼らずに生きていける状態で、そのためには社内の評価、社外の評価(市場価値)、この2つを同時に高めておかないと自信がなくなると思った。
大企業の場合は社内での競争が激しいじゃないですか。一方、僕が入社した当時のガイアックスは平均すると1部署に8人ぐらいしかいなくて、そのうち半分はエンジニアでした。社内の競争がない環境で、どんどん市場にアクションできる会社で経験を積まないと不安だったんです。
大学では本当に優秀で勝てないと思わされた同級生がたくさんいました。商社とか金融とかに行くと、もっと優秀な人がごろごろいるわけじゃないですか。その人たちに勝てる自信があるなら大手に行ってもよかったのかもしれませんが、学ぶスタンスでいくと埋もれてしまうんじゃないかなと。
田中 自分の客観的な価値を推し量れる学生はなかなかいないです。管さんはなぜそういうふうに考えるようになったんですか?
管 僕の場合は経験が良かったと思っていて、それは2つの大学を経験したことです。実は早稲田に入る前に立命館大学で1年間、仮面浪人をしていました。僕は学歴は仕事において関係ないと思っていますが、2つの大学名を出したときの周囲の反応ってショックなぐらい全然違いました。
立命館の学生も優秀な人は多くて、実はガイアックスでも同級生を1人スカウトしたぐらいです。でもブランドってすごくて、僕自身、正直、早稲田にいた4年間は気持ちよかったですよ。どこ行っても早稲田と言うと受け入れてくれる。僕はブランド名が結構好きだし、あったら依存してしまうことに気付き、このまま社会人になってブランドのある会社に行ったらそのブランドに甘んじて自己成長を怠るだろうなと思ったのです。