親切な先輩を好きになれない
脚本家、大石静さん
会社で自分のことをかわいがってくれる同性の先輩がいます。助けてもらったり相談に乗ってもらったり、誕生日プレゼントをいただくこともあるのですが、どうしても好きになれません。言動のところどころで心から尊敬できないのです。自分は心の狭い人間なのでしょうか。(神奈川県・20代・女性)
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誰にでも合わない人はいますから、好きでもない人を、無理やり好きになる必要はないと思います。それはあなたの心が狭いからではありません。
質問の文章を読むと、実はそんなこと、もうあなたにもわかっているように感じられますが……。間違っていたらすみません。
世の中に思いを一つにできる人間なんて皆無に近いと思うのですよ。さらには心から尊敬できる人なんか、一生のうちに一人二人、出会えればラッキーな方でしょう。
人は様々な集団に関わりながら生きていくわけですが、どの集団のなかでも角を立てず、誰とでも仲良く過ごすことを美徳とする考え方が、世の中を覆っているとしたら、それも危険なことです。なぜなら、個の確立なくして、集団の結束もないと思うからです。
中学生や高校生のなかには、好きでもないクラスメートであっても誰かとつるんでいなければ安心できない、仲間外れになることが何より怖いという子がいますが、あなたもそれに似た心境から、まだ完全に卒業できていない気がします。
もう社会人なのですから、一人でいることを恐れてはならないと思います。これを機に、
「誰にも絡め取られない」
「私は私」
「入り込んで来るな」
という毅然とした態度を、その先輩にも、会社の他の人たちにも、少しずつ見せていくように努めてみたらどうでしょう。
簡単ではないと思いますし、生意気になったと誤解される可能性もあります。しかし、ここで肝を据えなければ、いつまでもあなたはその先輩に、子分のように扱われ続けるでしょう。
これからは何事も自分で考え、自分で解決する姿勢を見せましょう。ひとりで責任を背負う芯の強さを見せましょう。それしかないと感じます。
これから先、あなたが独立した個人として毅然とした態度をとることができれば、先輩の問題だけでなく、あなた自身の心も自由になり、楽になって、未来の可能性も広がりますよ、きっと。
どうか、強い心を持ってください。
[NIKKEIプラス1 2019年7月6日付]
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