「当社の自慢は部門間の仲がいいことです。例えば開発と営業は仲が悪いのが普通です。営業は『開発がろくなものをつくらないから売れない』と言い、開発は『いいものをつくっても営業が売らないからダメなんだ』と罵りあったりします。それだと絶対うまくいきません。でも当社は協力し合って、開発段階から営業が市場動向の情報などを取ってきたりします。営業が『ちょっとアスクルにどういう商品なら載せてくれるか聞いてくる』とかいって、開発は『じゃあ、こういうふうにしようか』となる。お互いに目指すところは『売れるものをつくりたい、売りたい』で一緒ですから」

エキスパートの判断を信頼

――1992年から四半世紀以上、社長を務めています。心掛けていることはありますか。

「役員人事でしょうか。私は役員が持ってきた案件については、基本的にイエスマンなんです。これは社長を長く経験した中で導き出した結論です。会社の規模にもよりますが、50人ぐらいまでの会社はトップダウンで社長が全てを決めるぐらいの気持ちじゃないと、社員はついていかないでしょう。ところが数百人規模になってくると、社長が全部を決めているようではダメです。社長はスーパーマンではありませんから、全ての分野のエキスパートになることはできません。それぞれの部門にエキスパートを適材適所で配置すれば、その人たちが正しい判断をしてくれるはずです」

「そろそろ後進に譲らなければいけない時期かなと考えています」とも

「よく分かっていない社長が結論を出すと、大概失敗します。現場の人たちのほうが分かっているのです。社長がやるべきことは人事です。全て正しい判断を下せると思える優秀な役員を集めて『組閣』ができれば、社長なんて稟議(りんぎ)書にハンコを押していればいいんです。そのほうが会社はうまくいきますよ。ただ、私もかなり長く社長を続けているので、そろそろ後進に譲らなければいけない時期かなと考えています」

課題は「第3の柱」となる大型商品

――今後の課題は何でしょう。

「業績はここ数年、ほぼ横ばいです。ペーパーレス化が進んだことでファイルの売り上げが激減し、ピーク時の半分ほどになりました。これまではファイルの落ち込みをテプラがカバーしていましたが、最近はカバーしきれなくなっています。ファイル、テプラに次ぐ第3の柱と呼べるような大型商品を開発することが最大の課題です」

「現在はM&A(合併・買収)で家具の通販や造花、フォトフレームなどの子会社を増やして事業の幅を広げています。小型で低価格のキッチンまわり家電品、トースターとかコーヒーメーカーなどを手がける子会社が好調です。でも何が柱になるか、まだ分からない段階です」

「文具業界全体が少子化やデジタル化で厳しい状況にあります。だからこそ、キングジムは電子機器に『逃げる』のです。電子機器を敵ではなく、なんとか味方にしていく。常にそうした努力を続けないと、生き残るのは難しいでしょう」

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宮本彰
1954年生まれ。77年慶大法卒、キングジム入社。常務総合企画室長、専務を経て92年から現職。88年にプロジェクトリーダーを務めた「テプラ」を大ヒットさせ、ユニークな製品を開発する社風を育む。

(笠原昌人)

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