東京・御茶ノ水に一風変わったコンセプトのレストランがある。テーマは「お茶」。飲むだけでなくお茶を食べて楽しむ日本茶レストラン「レストラン1899(いち・はち・きゅう・きゅう) お茶の水」だ。1899年創業、120年の歴史を持つ老舗で、「ミシュランガイド東京2019」のホテル旅館リストにも掲載される「ホテル龍名館お茶の水本店」(東京・千代田)に併設している。
このレストランは、もともと純和風の旅館だった「ホテル龍名館お茶の水本店」を2014年にリニューアルしたことで誕生した。レストランも純和風だったが、リニューアルに合わせてレストランも見直そうということになった。どんなテーマの店にするか、社内会議でテーマを募ったところ、若手社員から出たアイデアが、「お茶の水にちなんでお茶はどうだろう? 旅館を起源とする龍名館だから、日本で醸成された文化のお茶をテーマにしては?」という案だった。
「お茶」は和食には欠かせないものである。お茶をテーマにしたレストランなら、和のおもてなしを大切にしてきた老舗旅館で培われた「おもてなしの心」を伝える場にもできる。よし、それでいこう。そんな経緯でレストランがリニューアルオープンした。もちろん店名の1899は創業年にちなんだものだ。

「お茶には正反対の2つのイメージがあります。1つは茶道のお茶。ルール・作法が厳しく、一般の人にはハードルが高いお茶のイメージです。もう1つは自宅で飲むお茶。こちらは身近にありすぎて、お金を払って飲むものという感覚がないですよね。『レストラン1899 お茶の水』のお茶はそのどちらでもありません。飲むとホッとする、ほっこりするようなお茶の魅力を、スタイリッシュな空間で楽しんでもらいたいのです」(経営会社の龍名館、広報・山口沙織さん)
その言葉通り、店内は洗練されながらも落ち着いた和の雰囲気が漂う。照明は和傘をイメージしてデザインされ、ソファは緑茶やほうじ茶を連想される色合いだ。庵(いおり)をイメージしたティーカウンターには鉄製の茶釜があり、茶釜でわかした湯をひしゃくですくってお茶をいれる。
さらにこの店にはほかの店にはいない「茶バリエ」と呼ばれる専属のお茶のソムリエがいる。「茶バリエ」は同店が独自に設置した資格で、同店で取り扱う茶葉の効能や特徴を習得したスタッフがこう名乗る。現在計9人の茶バリエが在籍し、茶葉に合わせて浸出時間を変えながら、丁寧に一杯の茶をいれてくれる。日中のカフェタイムには茶バリエがいれた日本茶、和紅茶、ブレンド茶が楽しめる。「茶道とは違い、この店には難しいルールはありません。気軽にお茶を楽しんでください」(山口さん)