令和元年5月1日。「平成」が終わりを迎え、「令和」が幕を開けた記念すべき初日、都内に2軒の新店が産声を上げた。
この2軒のラーメン店、提供物のクオリティーがすこぶる高い。可もなく不可もない単なる新店舗ならば、「令和元年初日オープンの店」というだけのことで、わざわざこのコラムに採り上げるには当たらない。この両店はオープンから1カ月と経たない現時点(5月24日)で既に、行列店へと躍進を遂げているのだ。私の実体験に照らしても、同日にオープンした2軒のラーメン店が共に人気店として注目を浴びるケースはかなりレアだ。
ご興味があれば是非、足を運んでいただければうれしい限りだ。
宍道湖しじみ中華蕎麦琥珀(しんじこしじみちゅうかそばこはく)
<シジミの魅力を徹底探求。新時代を切りひらく貝だしラーメン>
まず最初にご紹介するのは「宍道湖しじみ中華蕎麦琥珀」。
店舗の場所は京急本線雑色駅から徒歩5分強。駅前から伸びる下町風情が漂う商店街の雰囲気を肌身で感じながらひたすら直進すると、やがて現れるJR線の踏切。その踏切の先に映る長蛇の列こそが、同店のランドマークだ。この踏切は遮断機がなかなか上がらない、開かずの踏切だ。店舗を目前にして気をもむ人も少なくないとは思うが、踏切が開くのを粘り強くお待ちいただきたい。

現在、同店が提供する麺メニューは「宍道湖しじみ中華蕎麦(塩)」と「地鶏としじみの中華蕎麦(醤油=しょうゆ)」の2種類。看板メニューは券売機の筆頭を飾る「宍道湖しじみ中華蕎麦(塩)」だ。
「私は生粋の蒲田っ子。蒲田生まれの蒲田育ちで、17年間営んでいた母の店を譲り受けラーメン店へと改装したのが、この『琥珀』です」。そう笑う岩田店主は都内を代表する実力店である「麺処ほん田」グループの出身。このたび、満を持して独立し一国一城の主となったのだ。
「10年前に食した『蜆(シジミ)ラーメン』の味に衝撃を受けましてね。それが、ラーメンにおける蜆という食材の可能性に着目したキッカケです」
「ほん田」グループで修業を重ねている間も、その鮮烈な印象が脳裏から離れず、「琥珀」の開業に向けてラーメンを開発するに当たって、何の迷いもなく、だしに用いる素材の主役として蜆を据えた。