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ホントは怖い「一見、いい人」 元陸自心理教官の教え

元自衛隊心理教官の下園壮太さんに聞く(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

「いい人なのだけど、なぜか疲れる、イライラする」――。こんな「一見、いい人」は、あなたの周りにいないだろうか。人当たりが良く、取り立てて欠点も見当たらない「いい人」だけに、あなたが抱いている負の感情を周りに共感してもらえず、自分が消耗してしまう。こんな対人ストレスのメカニズムを著書『「一見、いい人」が一番ヤバイ』で解き明かしたのが、自衛隊で長く「心理教官」を務め、退官後は一般の人を対象に心理カウンセラーとして活動する下園壮太さん。一筋縄ではいかない人間関係をどう受け止め、対処すればいいのか、日経Gooday編集部が下園さんに聞いた。

◇  ◇  ◇

編集部:下園さんが3月に出された著書『「一見、いい人」が一番ヤバイ』(PHP研究所)を拝読しました。「付き合っているぶんには感じが良くて、仕事は任せてくれる『いい人』だけど、何かトラブルが起こると責任を逃れようとする上司」「志は立派だけど、過去の自分の経験から過剰な頑張りを部下に要求する上司」「聞き上手で悩みの相談に乗ってくれるけれど、周囲に言いふらしかねない先輩」「一見親切でやたらとモノをくれるけれど本音が怖い友人」――。身近な環境を見回せば、きっと誰もが思い当たるようなケースがたくさんありました。こういった「一見、いい人」という人物像をテーマにされようとしたきっかけはどこにあったのですか?

下園さん:実は、編集者から「このテーマで執筆していただけないか」という提案をいただいたのです。「一見、いい人」というフレーズを聞いたとき、最初私は、カウンセリングでよく出会う「いい人ほどいろいろな気遣いをし、社会の中で消耗していく」というテーマだと思いました。

しかし、具体的に編集者の話を聞いていくと、それだけではないようなのです。「見るからに悪い人と違い、『一見、いい人』との付き合いが難しい」というのです。第一印象が良くても、次第に嫌な面が見えてくる。しかし、相手が「一見、いい人」だから責めにくく、ほかの人からも「あの人が苦手」という気持ちに共感を得られにくい。そして、疲れたりイライラしたりする自分のほうがおかしいのかな、と悩んでしまう。そういった悩みを持つ人が多いように感じるので、このテーマを掘り下げてほしい、というオーダーをいただいたのです。

編集部:なるほど、普通の人間関係よりも、ひねりがある捉え方ですね。しかし、分かります。「最初はいい人だ」と思っても、付き合っているうちに、困ったところ、苦手なところが見えてくる。けど、人当たりも柔らかく、周りともうまくやっているから、共感が得られず、モヤっとする。確かにありますね。

下園さん:そうなんです。実際に周囲にも聞いてみたところ、「いる、いる」「困るよね」というリアクションが多かったのです。カウンセリング現場を振り返ってみても思い当たることが多い。

そこで、改めて私が日々接しているクライアント像を捉え直してみました。確かに、最初に連想した「いい人で周囲に配慮しすぎて消耗し、うつ状態になる」という人は多いのです。これを「パターン1」とします。

その一方で、「優秀で業績もあげているような人のそばにいて、苦しんでいる。こちらが『苦しいのなら、あなたがその人から離れる、という方法もあるのでは』と提案してもなかなか離れられず、うつ状態になる」という人もけっこういることに気づきました。これを「パターン2」としましょう。

パターン1はいわば王道。対処法についても、これまでの著書でたくさん発信してきました。しかし、パターン2の人には「現代の病理」が色濃く映し出されているし、本人にとって分かりにくいぶん、重症化しやすいという特徴があるのです。

「一見、いい人」に悩むのは現代社会の病理

編集部:ここ10年ほどで、スマホやSNSが当たり前になって、人とのつながり方も大きく変わってきたと思います。そのせいもあってか、過度に「空気を読む」人も増えている、言い換えると同調圧力が高くなっているようにも感じます。また、世の中全体に「許容度」というべきものが減っているように感じる人も少なくないでしょう。これらと、今おっしゃった「現代の病理」とは関係があるでしょうか。

下園さん:まさにそうだと思います。私たちが子どもだった数十年前と今では、コミュニケーションが大きく変わりましたよね。少し極端かもしれませんが、田舎の集落の人間関係をイメージしてみてください。「誰が誰と仲良し」だとか、「〇〇さんちでこんなことがあった」とかをみんな知っている。とにかくリアルな人間関係が濃厚。あまりに濃すぎて、若者は疲れて都会に飛び出す、というようなケースも多かった。

一方、今は、ほんの数メートルの距離にいるのにメールでやりとりする時代です。SNSでゆるく広くつながるコミュニティがあるなど、人とのコミュニケーションが大きく変わりました。「メッセージのやりとりだけですむ」というのは一見楽に思えますが、実は、直接対面で話したり、電話で話すのと違い、情報の全体像が見えにくいという側面があります。

ここで、自衛隊での話を例えに説明しましょう。

相手は自分に敵意を持っていないか、相手が敵意を持っていた場合に自分にどのくらいのダメージを与えるか、そのためにどのような対策を準備しておくべきか、などの心づもりをすることを自衛隊では「敵の可能行動」の考察と呼びます。私たちは、対面で話すときに、相手の表情や口調から、「相手には敵意がないか」「こちらが言ったことを根に持ってないか」「相手の口調を素直に受け取ってよいか」ということを無意識のうちに探っているのです。

ところが、メールなどの言葉だけのやりとりだと、「敵の可能行動」が見えにくい。もしかして怒っているかもしれない、という相手から「大丈夫です」という言葉だけもらっても「本当かな。どう大丈夫なんだろう」と悩むことがありますよね。

このように、メールの文面だけではどうしても疑心暗鬼になり、不安軸で物事を捉えることが多いのです。相手の意図がどこにあるのか、こんな可能性があるのではないか…などと考えるのはエネルギーを使います。将棋では、何手か先までを予測しなければいけませんから、膨大なエネルギーを消費するそうで、プロ棋士は一局で体重が2~3キロも落ちることがあるという話を聞いたことがあります。同じような「配慮疲れ」による消耗が現代人を疲れさせていると思います。

編集部:なるほど、「いい人なのに、モヤモヤする」と悩むことが、「疲れ」に結びつくのですね。コミュニケーションがデジタル化したことで、それが顕著に出る可能性があると。…とはいえ、対人トラブルは、人と人がある限り起こるもので、今に始まった話ではないという面もありますよね。

下園さん:そうなんです。ただ、質が変わってきたと感じます。少し前までは、パワハラ系のおじさん、例えば、誰もが引くような暴言を吐く人、ひどいケースでは、すぐ殴ったり蹴ったりと暴力に及ぶ人も日常的に存在していました。「あのおじさんってひどいよね」というような、誰が見ても「明確な悪」を目にすることがわりとあったのです。

しかし今は、明確な悪が量的に減っています。「パワハラはNG!」という認識が広がってきたこともあるでしょう。その分、悪の姿がモヤモヤと曖昧(あいまい)になっていて、見えにくくなっています。

私はこの現象を勝手に「花粉症現象」と名付けています。昔はウイルスや菌が身の回りにたくさん存在し、免疫システムはそれを叩くのに一生懸命でした。しかしそれが少なくなり、今度は花粉症が増えてきた。花粉ごときで、免疫システムが過剰に反応するのです。さらには、何もないのに自らを叩くようになる自己免疫疾患が起こるようになる。免疫が作動する対象が変わっているのです。

心地がいい部分もあるから「低温やけど」する

編集部:冒頭で、「一見、いい人」への対人ストレスは「重症化しやすい」と指摘されました。著書にも、「一見、いい人」は、見るからに嫌な人と一緒にいて疲れるよりも深刻で、それは「逃げ遅れるから」とありました。逃げ遅れてじわじわとダメージを受ける状態を「低温やけど」と表現されているのが印象的でした。

下園さん:体温より少し高い温度のものに長時間触れ続けると「低温やけど」を起こします。痛みを感じにくく、見た目にも出にくいため、軽症だと思いがちですが、皮膚の奥深くまで進行し、深いやけどとなりやすく、通常のやけどよりも治りにくくなることが知られています。

相手が、誰にでも分かりやすい「嫌な人」で、自分に対してパワハラをしてくるトラブルメーカーだったとしましょう。明確に「嫌な人」であるぶん、この人は良くないと、誰もが分かる。爆竹のように、近づいたらやけどするよ、というレベルです。「熱い熱い」「危ない危ない」「早く離れたほうがいい」と、自分でも対策をとれるし、距離をとることに対して周囲も理解しサポートをしてくれやすい。

しかし、「一見、いい人」は、表面的には「あったかい」心地よさがあるのが厄介なのです。その人と接すると、自分も「自分はこの人に好かれている」「この人となら成長できそう」「私が守ってあげなければ」というような快感や願望を抱くのです。その感覚は湯たんぽやカイロのように比較的低温で、ほどよくあったかい。だから、すぐには離れがたく、知らないうちに皮膚の深層までやけどをする「低温やけど」になり、どんどんエネルギーが奪われるのです。

しかも、周囲の人は「いい人なのにどうして?」とあなたの嫌悪感を理解してくれないので、自分だけが不平不満、悪口を言っているような罪悪感を覚え、自分だけ頑張れていないような気がして自分を責めてしまいます。カウンセリングの場でこんな人が来たら、私は「離れてもいいんだよ」とお話しします。その方法を、今回は一冊にまとめたのです。

◇  ◇  ◇

次回「実は怖い『一見、いい人』 職場で逃げられない理由」では、私たちがどうして「低温やけど」しているのに気づけないのか、について「理性」「感情」という視点から下園さんに聞いていく。

(ライター 柳本操、カメラマン 菊池くらげ)

下園壮太さん
心理カウンセラー、MR(メンタルレスキュー)協会理事長。1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを経験。その後、自衛隊の衛生隊員などにメンタルヘルス、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして約300件以上の自殺や事故に関わる。2015年8月退職。現在はMR協会でクライシスカウンセリングを広めつつ講演などを実施。近著に『「一見、いい人」が一番ヤバイ』(PHP研究所)。

[日経Gooday2019年5月9日付記事を再構成]

「一見、いい人」が一番ヤバイ

著者 : 下園壮太
出版 : PHP研究所
価格 : 1,296円 (税込み)

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