上記の2も日本人が陥りがちな「大いなる誤解」と言えるでしょう。自分の体臭は無い、薄いと考える人は多いですが、これは危険な考え方です。前述の村井千尋氏はこう言います。「個人差や遺伝による体臭の強弱はありますが、生きていれば誰でも体臭はあります」
確かに世界の民族を比較すると、日本人は体臭の薄い層に入ることになるそうです。しかし、人間も生物です。日常において無意識のうちに多くの成分を分泌しています。そして分泌物は空気に触れることによって酸化し、臭気を発します。またミクロの世界で見ると皮脂や皮膚などには細菌が常在しており、汗を分解するなどの活動の過程で臭気を発しています。「体臭」は誰もが持つのです。
人間である限り、「臭い」はゼロではありません。しかし、自分ではあまり感じないかもしれません。自分の臭いにはすっかり慣れてしまって、あまり感じないでいるのが普通なのです。他人のお宅に入って、漂う空気臭に違和感を感じたことはないでしょうか? しかし、そのお宅に住んでいる人にはそれは「無臭」です。住んでいるうちに慣れてしまうからです。
このように、自分にとっては「無い」同然でも、他人には大いに違和感があるのが、体臭というものです。周囲への気遣いは必ず必要だと思ってください。そのときに、ただ「臭いを抑える」だけよりも、「自分が良い感じに香る方向」にかじを切るほうが賢い選択と言えます。
前述のように、香りは生まれの由来のとおり「臭い隠し」という側面も否めませんが、むしろ汗などのイヤな臭いは先に処理して、良い香りをオンする、という考え方が普通です。むしろ、洗練された「大人の必需品」として認識いただきたいものです。
上記の3のように、香りをプラスするのが「不自然」と感じる人もいますが、果たしてそうでしょうか。いくつになっても、赤ちゃんと同じように、洗いたてのせっけんの香りだけさせて、むくなイメージでいるほうが、「大人」として不自然な気がします。
また、つけ方として、TPOに合わないような甘い香りやセクシーな濃い香りをさせているのなら、上記4のように「浮ついている」「かっこつけすぎ」と感じる人も多いかもしれませんが、その時間や場所にふさわしい香りをさりげなくさせている人に、そんな印象を感じる人は少ないのではないでしょうか。
いかがでしょうか。人の「嗅覚」への対策をおろそかにせず、当たり前の身だしなみの一つとして捉えることで、「好感」「安心感」「できる感」が感じられるビジネスパーソンになっていただきたいと思います。
(協力:調香師 村井 千尋氏)

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