――今までで最もうれしかった瞬間、つらかった瞬間は。

「最もうれしかったのは乳房を切除し、トップレスで水泳できた瞬間。湖で友人と泳いだが、最高にハッピーだった。胸にあたる水の感触が心地よかった。自由に飛び回る鳥になった気分だ。自分に正直でいられることはすばらしいと思う」

講演会で自らの体験を語るジェマさん(カナダ大使館で)

「一方、つらかったのは、幼年期にかわいがってくれた神父から性的虐待を受けたこと。安心して寝ていたら、神父が私の体の上にのしかかってきたので驚き、その間、凍り付いたように体が動かなかった。神父が付けていた十字架が顔に当たったことだけを覚えている。とても不快な体験であり、トラウマとしてずっと私を苦しめている」

自分を呼ぶ代名詞は「They」、性別は流動的なもの

――2017年にカナダで初めて男女の記載がない出生証明書を取得しましたね。

「長年の努力が実った。多くの人々から支援してもらったおかげだ。パスポートや運転免許証にもそれを反映できている。でも一部の人々からは様々な嫌がらせや脅迫も受けてきた。唾を吐きかけられたこともあるし、安全のために転居を強いられたこともある。ただ正義のために闘うんだという自分の意志が揺らいだことはない」

「ちなみに私は自分を呼ぶ代名詞として、SheでもHeでもなく、あえてTheyを使っている。性別は男とか女とか二択で明確に区分されるものではなく、流動的なものだ。個人によっても様々な受け止め方、考え方があることを世の中にもっと知ってほしい」

運転免許証の性別欄には、男性でも女性でもなく、第三の性である「X」と記載されている(画像は一部加工)

――日常生活で困ったことはないですか。

「私の外見は男性に見えるが名前は女性なので、セキュリティーチェックでしばしば止められる。また飛行機で移動する際には私が座席を間違えていると思われ、『あなたの席ではありませんよ』とスタッフから声をかけられることもある。母と一緒にいる時、そういうことが起きると、母は泣いてしまう。でも時間をかけて周囲に説明すれば理解してくれるし、性別にXを記載した証明書を見せれば、尊厳を持って扱ってもらえる。それほど問題は感じていない」

――ジェマさんにとって理想の社会とは。

「性差別、民族差別、幼児虐待、トランスジェンダーへの差別がない社会のことだ。とにかく対話と努力を続け、現状を変えることが大切だと考えている」

――夢はなんですか。

「私はもうすでに夢の中で生きている。成功の定義は難しいが、多くの若者たちと社会の障壁について議論し、彼らが生きる場所を提供できるように活動してきた。自分なりに色々なことを体験し、達成してきたことは誇りに思っている。6月には女性と結婚する予定だ。こんな幸せな人生を歩めるなんて夢にも思っていなかった。今は幸せな新婚生活を送ることに専念したい」

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