お笑い×アイドルの吉本坂46 つらいことも全部ネタに
乃木坂46、欅坂46に続く、秋元康プロデュースによる坂道シリーズの第3弾として誕生した「吉本坂46」。吉本興業グループに所属するタレントを対象に2018年2月から選考がスタート。半年にわたるオーディションで46人のメンバーが選ばれ、同年12月26日に『泣かせてくれよ』でメジャーデビューした。6次にわたる審査やミュージックビデオ(MV)撮影など、メンバーたちは芸人の仕事と両立させながら取り組んできた。代表して、ゆりやんレトリィバァとはんにゃの金田哲に、デビューまでの約10カ月を振り返ってもらった。
――アイドルとしてのオーディションはいかがでしたか。
金田 ものすごい緊張感でしたね。僕は秋元康さんが実在するのかを確かめたくて、応募しました。
ゆりやん 私は子どもの頃にモーニング娘。に入りたかったんです。劇場に吉本坂のポスターが貼られたのを見て、「アイドルにもなれたら夢が2個かなえられるやん」と思って挑戦しました。
金田 オーディションではやっぱり周りが芸人ばかりだから、張り詰めた空気のなかでもみんなくだらないことをやろうとするんですよ。もう笑いをこらえるのが大変。平成ノブシコブシの吉村さんは、歌っている途中で笑ってしまって、2次で落とされました。
ゆりやん あの吉村さんがですか? 私も普段からネタ見せオーディションとかで慣れているはずなのに、それでも緊張しました。
金田 水着審査も面白かったね。ほとんど写真を使った大喜利。
ゆりやん 他の方のを見るのも楽しかったです。最終面接は本当にドキドキして。秋元先生の前で歌う時に、「プリンセスプリンセスの『XL』、あっ、『M』でお願いします」って言おうと決めてたんですよ。でも急に音が流れ出して、めちゃくちゃテンパりました。
金田 僕は最終審査でパンサーの尾形さんと一緒だったんだけど、尾形さん何を思ったのか、秋元先生に菓子折り持ってきたの。
ゆりやん はははは!
金田 ピキーンってとんでもない空気になって。尾形さん、ウルフルズの『バンザイ』を歌ったんだけど、最初の「♪イェーイ 君を」が全然歌えなくてボロボロ。でも受かってました。
■楽屋では健康かお金の話ばかり
――お2人は16人の選抜メンバーに入りました。そのグループ分けについてはどう思いましたか。
金田 全員最初は戸惑ってたよね。
ゆりやん でも曲を聴かせていただいてから、納得できました。
金田 選抜メンバーは哀愁とか人間力。若手中心のダンス選抜はカッコ良さ、3人ユニットはコミカル、ベテランユニットは大人の魅力って、色がちゃんと分けられててね。個性が強すぎてサーカス団に近いけど(笑)。
ゆりやん 選抜メンバーは平均年齢が高いのでほんわか。全くピリピリしていないんですよ。
金田 本当、楽屋では健康かお金の話ばかりですからね(笑)。
――『泣かせてくれよ』を聴いたときの印象は。
金田 聴けば聴くほど心にしみるなと。スナックで歌いたい感じ。
ゆりやん MVを見てくれた先輩から「めっちゃいい曲やな」って言ってもらえました。
金田 MVの撮影がまた大変だったんですよ。夜中だったしおじさんばかりだから、すごい疲労感。
ゆりやん 私は同期のガンバレルーヤとおばたのお兄さんと一緒に、ケータリングのジュースを1人4、5杯いろんな味を楽しんで、全然しんどくなかったです。
金田 若手とおじさんとに、はっきり分かれたね。
ゆりやん 金田さんやシャンプーハットのこいでさんたちのパート、渋い感じでカッコ良かったです。だけどみなさん下向いて、1コも歌ってなかった(笑)。
金田 振り付けに精一杯で。乃木坂先輩や欅坂先輩に聞くところによると、直前に振り付けが変わるのはよくあるらしいけど、本当に何回も変わるから。楽屋ではみんなへこたれて(笑)。
ゆりやん それがむしろ、いい哀愁になってました(笑)。いつもだったら「右足、左足」みたいな感じで覚えるのが、TAKAHIROさんの振り付け指導では「ここでは酔っぱらってください」とか、感情とかも含めて説明していただいて、すごく勉強になりました。
■坂道ファンに認めてもらえるように
――坂道ファンからはアンチも多いと聞きますが。
金田 これは仕方がない。僕も、ももいろクローバーZが好きだからファン心理は分かります。だから、認めてもらえるような頑張りを見せたいです。ぜひ、握手会に来てください。メンタルは強いんで。普通は握手会ってパーテーションで仕切られていて、どのくらいの方が来ているかって、メンバーは分からないらしいの。吉本坂は全部外されてるんだって(笑)。
ゆりやん 「全然おらんやん!」って言ってもらえたら助かります。
金田 人気がない、すべる…。芸人は全部笑いにできるっていう強みはありますね。
ゆりやん 46パターン出るCDも、自分のが1枚も売れなくても「ゼロ枚やって~」「泣きたいわこっちが」ってネタにできますし。どんなことがあっても、プラスにしていきたいと思ってます。
金田 いつかは受け入れていただけるように。新人としてイチから取り組みます。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2019年2月号の記事を再構成]
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