『どろろ』50年ぶりアニメ化 手塚治虫の魅力は不変
手塚治虫の名作マンガ『どろろ』が50年ぶりにテレビアニメ化された。戦国の世を舞台に、鬼神に奪われた身体を取り戻すために旅をする少年・百鬼丸と旅の途中で出会った幼い盗賊・どろろの2人が主人公。彼らの戦いの日々と、乱世に生きる人々を襲う様々な事件を描く。
1960年代後半に手塚治虫が発表した同名マンガが原作。制作は、手塚作品を知り尽くす手塚プロダクションと、『この世界の片隅に』や『ユーリ!!! on ICE』などヒット作を連発するMAPPAが担当。
監督には『機動戦士ガンダムUC』などの古橋一浩、シリーズ構成には『進撃の巨人』の小林靖子、キャラクター原案には『テガミバチ』などの人気マンガ家の浅田弘幸らトップクリエイターが集結している。
『どろろ』の魅力について、「ダブル主人公である百鬼丸の欠損奪還設定の斬新さ、どろろの生命力。そして時代設定の希少さかも」と語るのは古橋監督。
69年に制作されたテレビアニメの本放送も見ており、LD版も所持しているというが、新たなアニメ化に対し、どのような考えで挑んだのか。
「リメイク作品が増えている近年は新しいものへのニーズが薄れているのでしょうが、オリジナルを見ることも容易なネット社会時代、違いを出すのは最大のポイントです。ですが、『どろろ』は手塚作品。さらには室町後期の時代劇ですから、今の時代に合わせたアレンジは表層にとどめ、芯となるテーマの普遍性を損なわないことを意識しています」(古橋氏、以下同)
その言葉通り、物語やキャラクターの基本設定に原作から大きな変更はないが、浅田原案によるキャラクターデザインにはインパクトがあり、新アニメを印象付けている。「浅田さんは手塚作品の大ファンでもあり、ご本人のイメージを最優先にして描いてもらっています。なぜならリスペクトを力にしたいから」
またストーリー構成の部分では、「世界観や周辺設定はまず私がプランを出して、小林さんとキャッチボールしつつ構成は全て一任したんです。キャラクターの補強に関しては『火の鳥』など他作品の手塚キャラクターの要素を付加しましょうか、という話し合いをしました」と、制作初期を振り返る。
近年は『どろろ』のようなリメイク作品が増え、古橋監督が携わった『~UC』ではOVAの劇場上映と同時にパッケージ販売、後にテレビ放送が行われるなど、アニメビジネスを取り巻く環境は激変している。しかし、「客層の高齢化に向けての展開については、自分の価値観や審美眼がそのまま判断材料になるので極めて作りやすいし、作りがいを感じています」という。
「今作は特に私と同世代(50代)の方にも、既にアニメを卒業した方たちにも、手塚作品ならば見てもらえる可能性があると思っています」
(日経エンタテインメント!2月号の記事を再構成 文/山内涼子)
[日経MJ2019年2月1日付]
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