『カメ止め!』の上田監督 大ヒットから学んだこと

日経エンタテインメント!

2018年の映画界で、大きな話題を呼んだのが『カメラを止めるな!』だ。低予算映画が、映画ファンの口コミから話題になり、大ヒットした。一躍“時の人”となった上田慎一郎監督に現在の心境と、映画監督として今後目指す方向性を聞いた。

1984年生まれ、滋賀県出身。中学時代から自主映画を制作、2015年にオムニバス『4/猫』の1編でデビュー。19年は、松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト第7弾作品などが公開予定(写真:吉澤咲子)

「よくヒットの感想を聞かれるんですけど、まだ感想を持つほど、落ち着けてないんですよ。取材を受けたりテレビに出たり、経験したことのないことが怒濤(どとう)のように押し寄せて、嵐の日々なので(笑)。

うれしかったのは、キャストが注目されて、ドラマに出たり、事務所が決まったりしたことです。もともと『カメ止め!』は、新人監督と新人俳優がワークショップを経て、1本の映画を作るという企画。みんな安くない受講料を払って参加していたので、『12人全員に見せ場を作らなきゃ』と使命感を持って作りました。だから彼らが世に出てうれしいし、うれしいと思える『仲間』がいるっていうことも、心底うれしいです。

この映画が、見た人の現実を動かしたことも印象的でした。映画って、大嘘じゃないですか。恐竜が生き返ったり、ターミネーターに追われたり(笑)。でも、そんな大嘘だらけの映画を見て、僕は現実が変わって、映画監督になろうと思った。いつかそんな映画を作れたらいいなと思っていたんですが、今回、映画館のロビーとかで、そういう話を聞くことができたんです。『僕も役者を目指すことにしました』とか『映画の道を諦めていたけど、もう1回撮ってみようと思います』とか。興収や動員の数字以上に、心を動かされました」

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
『カメラを止めるな!』(ブル-レイ&DVD発売中/バップ)

原作モノが主流のなか、オリジナル作品で新人監督が大ヒットを飛ばしたことも快挙といえる。今後、どんな監督を目指すのか。

「ゾンビ映画も好きですし、時間軸が行ったり来たりする『パルプ・フィクション』や『運命じゃない人』のような映画も好き。モノ作りの舞台裏を描いた『ラヂオの時間』『蒲田行進曲』なども大好きです。『カメ止め!』は、『ヒットさせよう』と作った映画ではなく、そういう自分の好きなもの、やりたいことを1本に込めた作品。今回のヒットで、これからもそのやり方でいいんだなと信じられたところがありました。一方で、原作モノも面白そうであればやってみたいと思います。自分が原作モノを監督した時に、どういうものを作るのか、興味があるので。

いずれにしても、100年後に見ても面白いと思えるような、普遍的な作品を作っていきたいです」

(日経エンタテインメント! 羽田健治)

[日経エンタテインメント! 2019年1月号の記事を再構成]

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