MONO TRENDY

私のモノ語り

貫地谷しほり 大好きなモノだけに囲まれて暮らしたい

2019/1/11

貫地谷さんの特技は着物を5分で着ること。今回の撮影ではビンテージの着物に心躍ったという(C)2019映画「この道」製作委員会

私自身も日ごろから、芝居で制限をかけたくないと思っています。演じていて、「これはやっちゃいけない」と自分で制限をかけそうになることもありますが、そうするとどんどん芝居が小さくなってつまらなくなる。たとえば、おもむろに大きな声を出してみると、意外に今までとは違うところに行けたりするんですよね。

演じるときに大切にしているのは、「置かれた状況にどのような気持ちでいられるか」。どんなに技術が進んでも、役者は自分自身しか表現するすべがありません。自分が嘘泣きしていると感じながらただ涙を流していたら、それは見る側に確実に伝わります。心から泣けるよう、その場に居ることを大事にしたいですね。

■衣装とメークで役に入り込む

演じる上で衣装やメーク、セットなどのモノに助けられることはとても多いです。作品ごとに違う人物を生きるという心構えですが、私という同じ人間なのでどうしても限界はあります。衣装が決まり、メークをすることで役に入り込むスイッチが押される。今回は大正時代などのビンテージの着物を着せていただきました。デザインや柄が独特のかわいらしいものばかりで撮影中は心躍りました。白秋にプロポーズされるシーンで着た着物が特にお気に入りで、記者会見でもそれを着させていただきました。

大森南朋さん演じる白秋はとても人間味にあふれていて、愛らしく憎めないキャラクターでした

白秋夫婦が暮らす家も、現存する家屋を使って撮影しました。小道具もビンテージか新品に「汚し」をかけたものなのか見分けがつかないくらい時代感が出ていて、京都太秦の職人さんのすごさを目の当たりにしました。関東大震災のシーンでは、家具を実際に倒すというアナログな手法でしたが、そのおかげでとても迫力のある映像になりました。

今はCG(コンピューターグラフィックス)の技術も素晴らしいのですが、「CGでここから物が降ってくるので、こう動いてください」と言われて動いてみても、想像が追いつかないこともあるんです。地震のシーンでは、息子役の男の子は物が倒れる間、不思議なことにじっと黙っていました。それが収まった途端に泣き出したんですね。実際に棚が倒れる様を目の当たりにしたり、倒壊する音に反応したりすることでしか生まれないリアリティーもあるのだと感じました。

「今、欲しいモノ」ですか? 遊ぶ時間かな(笑)。女優のお仕事は大好きですし、20代は一にも二にも仕事が最大の関心事でした。ですが、30歳になる少し前に尊敬する方から「女優業は私生活が忙殺される。だからこそプライベートを大事にしなさい」とお手紙をいただいて。すてきな先輩方を改めて見てみると、みなさん自分の生活を大切にしているなと気づいたんです。だんだんと考え方も変化して、今は(女優以外の)いろんなことをすることがすごく楽しいなと思えるし、いろんなところに行ってみたいなと思うようになりました。

あと、気になっているのがワインセラー。ある取材で「宝くじが当たったらどうしますか」って聞かれて、「豪邸がほしい」って答えたんですね。そしたら、「豪邸に住めたら、最初に置きたい家電はなんだろう」と妄想が止まらなくなって(笑)。ネットなどで検索して目に付いたのがフォルスターのおしゃれなワインセラー。かわいいもの好きの私は、部屋にこれを置いたらきっとテンションが上がりそうだなって(笑)。

実は、「モノ」が増えて困っているんです。宝くじの質問に対し、とっさに豪邸と答えたのもどうにかしたいという気持ちの表れだったのかも。気に入った製品の買い置きがないと不安なので、コストコのような大量パックも誰かとシェアせず全部ストックにしてしまうんです(笑)。豪邸であれこれ好きなものに囲まれて生活しつつ、自分に本当に必要な最低限は何かを見極めていけたらいいですね。いつか、自分の手が行き届く小さくてかわいい家で、大好きなモノだけに囲まれてこぢんまり暮らすのが最終的な夢なんです。

気に入った製品の買い置きがないと不安になるので、ストックしてしまうんです(笑)
貫地谷しほり
1985年12月12日生まれ、東京都出身。2002年に映画デビュー。04年の映画『スウィングガールズ』で注目を集める。シリアスな役からコミカルな演技まで幅広く演じ分け、ナチュラルに存在感を示す稀有(けう)な存在の女優。特技は着物を5分で着ること。

『この道』

(C)2019映画「この道」製作委員会

遊び人でダメ男の詩人、北原白秋(大森南朋)と、勤勉で真面目なエリート音楽家、山田耕筰(AKIRA)。正反対の二人が出会わなければ、今も歌い継がれる童謡は生まれなかったかもしれない……。白秋の妻、菊子を演じる貫地谷しほりをはじめ、与謝野鉄幹・晶子夫妻を松重豊と羽田美智子が、鈴木三重吉を柳沢慎吾が演じる。メガホンを取るのは『半落ち』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を獲得した佐々部清。2019年1月11日(金)から全国公開。

(文:橘川有子 写真:中村嘉昭)

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