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科学か迷信か 春分の日に卵がまっすぐに立つ理由

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/1/4

ナショナルジオグラフィック日本版

練習すれば、卵はいつでもまっすぐに立つ(PHOTOLIBRARY)

重いものほど速く落ちる。この思い込みが間違いであると示したのは、ガリレオ・ガリレイだ。多くの人が直感的に正しいと信じていることでも、実験や観察によってそれが迷信にすぎなかったと明らかになることがある。ナショナル ジオグラフィックの別冊『科学の迷信 世界を惑わせた思い込みの真相』から、地球にまつわる迷信を紹介しよう。

■春分の日は卵がまっすぐに立つ?

「春分の日は卵がまっすぐに立つ」という説がある。この話は本当だ。春分の日だけでなく、秋分の日や、夏至や冬至の日でも立つ。ついでにいえば、1年中、どの日にやっても立つ。

なぜか。

実はこれ、卵の殻の表面全体にとてもかすかな凸凹があるおかげ。米国ミシガン州のマンセローナ中学校で科学の授業を受けた生徒は、先がとがったほうを下にしても立てられるようになった。器用な人は、ぜひやってみよう。

もともとは中国の古い習慣で、立春の日に人々は卵を立てる。そうして昔から新年の幸運を祈ってきたのだ。1945年に『ライフ』誌の特派員、アナリー・ジャコビーがこの行事をたまたま見て、卵を立てる儀式を紹介する記事を書いた。この記事をUPI通信社が取り上げ、全米の新聞社に向けて配信。この記事をきっかけに、「春分の日の間は、しかもその日だけは、卵が垂直に立つ」という俗説が西欧社会に広まることになった。春分の日は、太陽がちょうど赤道の上を通り、昼夜の長さが等しくなる、1年にたった2回しかない日の一つだから、というのである。

おかしなことに、中国の立春は春分の日とは別の日だ。ジャコビーが見かけた行事も、2月に行われていた。平たくいうと、西欧のメディアが報じた卵を立てる中国の伝統と、アメリカにとっての春の訪れ、それに太陽と地球との位置関係から重力が安定するというまことしやかな話の間には、そもそも何の因果関係もないのだ。

科学的なアプローチによってこの迷信を覆すのは簡単だ。まずは今日、卵を立ててみよう。明日もやろう。毎日試し続けてみよう。そのうち、1年中、いつやっても卵を立てられるほどうまくなるはずだ。そんなことを試す気などない人は、この迷信を支える「サイエンス」のうさんくささに気づいたほうがいい。

春分の日や秋分の日に、太陽と地球との間に特別な重力場が生まれることはない。地上に置いた1個の卵に働く重力に太陽が及ぼす影響など、取るに足らない。それよりも、実験者が呼吸する息のほうがよっぽど、卵に大きな影響を与えるだろう。

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