お酒で顔が赤くなる人は、飲酒なしでも骨折リスク上昇飲酒と骨粗しょう症(上)

日経Gooday

「その通りです。お酒を飲めば、体内でアセトアルデヒドが発生するわけですから、その影響は当然受けますし、そちらの影響のほうがはるかに大きいと考えられます。ALDH2の活性が低い人がお酒を常飲するようになると、骨粗しょう症による大腿骨近位部骨折のリスクがさらにアップするということになります」(宮本さん)

やはりそうだったか。何と恐ろしい…。

頭が混乱しているところに、宮本さんからさらなる追い打ちがかかる。

「昔はお酒を飲んですぐ顔が赤くなっていたけど、飲み続けているうちに赤くならなくなったという人は、さらに注意が必要です。元来はアルコール耐性が弱いわけですから。また酒豪の人(ALDH2の活性が高いタイプ)でも、飲み過ぎれば骨折のリスクが高くなります」(宮本さん)

となると、日常的に酒をたくさん飲む人は、骨粗しょう症のリスクは避けられないということになる。宮本さんによると、そもそも「過度な飲酒が骨粗しょう症のリスクを高める」というのは、以前から医師の間では共通認識となっているのだそうだ。

◇  ◇  ◇

うーむ、多少予想はしていたものの、実際に話を聞くと予想以上の影響の大きさで、心が折れそうである。酒を飲み続けながら、健康寿命を長くし、バラ色の老後にするためにも何とかして対策を練らねばならない。

宮本さんによると、大腿骨近位部骨折は家族歴がある、つまり遺伝性があることが知られており、今回の研究結果はその要因の一つと考えられるという。「お酒を飲むと赤くなることは、本人あるいは家族などが骨折リスクに気付くための指標の一つになります。該当する人は家庭でできる骨折対策に取り組んでいただきたい」と話す。

では、先生、何かリスクを下げる手立てはあるのでしょうか?と尋ねると、「もちろんあります」と宮本さん。気になる対策は後編(2019年2月17日公開予定)に続く。

■お酒の強さに大きく影響するALDH2の活性

体内に入ったアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH1B)によってアセトアルデヒドに分解される。その後、「アセトアルデヒド脱水素酵素」(ALDH2)により、無毒な酢酸になり肝臓から排出される
体の中にアルコールが入ると、まずADH1B(アルコール脱水素酵素)によって、毒性を持つアセトアルデヒドに分解される。次にALDH2の働きによって、アセトアルデヒドは無害な酢酸に分解され、最終的には水と炭酸ガスなどに分解される。このADH1BやALDH2の活性は遺伝的要因が大きく影響する。特に、お酒の強さに大きく影響するのがALDH2の活性だ。

ご存じのように、遺伝子は両親からそれぞれ1つずつもらい受ける。両親から分解能力が高い遺伝子をそれぞれ引き継いだ人(活性型)は酒に強い酒豪タイプで、酒を飲んでも赤くならない人(ノンフラッシャー)がほとんどだ。

分解能力が高い遺伝子と、分解能力が低下した遺伝子をそれぞれ1つずつ引き継いだタイプ(不活性型、低活性型)は、全く飲めなくはないが、基本的には酒に弱いタイプ。普段からアルコールに親しんでない場合、顔も赤くなりやすい(フラッシャーと呼ぶ)。そして、分解能力が弱い遺伝子を両親から引き継いだ人(失活型)は、全く飲めないタイプ。ほとんどの場合がフラッシャーだ。なお、日本人の場合、酒豪タイプは約5割、酒に弱いタイプは約4割、全く飲めないタイプが約1割となっている(詳しくは「お酒で赤くなる人、ならない人 がんのリスクも違う」を参照)。

[注3]なお、野菜や果物には食物繊維や各種ビタミンなどの栄養成分を多く含み、適量摂取は生活習慣病予防などの健康効果も期待できる。避けるべきものではなく、適量摂取を心がけていただきたい。

(酒ジャーナリスト 葉石かおり、図版 増田真一)

宮本健史さん
慶應義塾大学医学部整形外科学先進運動器疾患治療学寄付講座運動器科学研究室室長。1994年熊本大学医学部卒業、2001年同大学大学院博士課程修了。2004年慶應義塾大学医学部助手(整形外科/発生・分化生物学)、2006年同大学医学部講師などを経て、2013年4月より現職。専門は、整形外科、骨代謝、骨粗しょう症。

[日経Gooday2018年12月4日付記事を再構成]

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