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お酒で赤くなる人、ならない人 がんのリスクも違う

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NIKKEI STYLE

酒を飲むと赤くなる人とならない人がいる。酒に強い人は、たいてい顔色が変わらないが、顔が赤くなる人でも結構飲める人がいる。酒を飲んで赤くなる人とならない人の違いはどこにあるのだろうか。また、顔が赤くなる人は、食道がんなどの罹患(りかん)率が高くなるという怖い話も耳にする。これは本当だろうか。今回は、飲酒により顔が赤くなる理由と健康への影響についてまとめた。

顔が赤くなる人、ならない人との差は?

世の中には酒を飲んで赤くなる人と、赤くならない人の2通りのタイプがある。ビールをグラスに半分飲んだだけで、顔が桜色に染まる女性を見ると、「ああ、なんて艶っぽいのだろう」とうらやましくなる。

筆者の場合、年に数回くらいは赤くなるものの、赤くなるまでの量が普通の人の倍以上。顔が真っ赤になり、「もう飲めません」と言えば酒を注ぐほうも納得するのだろうが、まったく変わらないので、「まだ飲めるだろう」と思われるらしく、本人は「マックスぎりぎりの状態」だというのに、グラスが空になるとすぐに酒をつがれてしまう。そんなこんなで毎度飲みすぎてしまうのだ。

顔が赤くなる人、ならない人との差は一体なんなのだろうか? 経験上、酒に強い人は顔色が変わらない人が多いように感じる。だが、顔が赤くなる人でもいける口の人もいる。酒の強弱と、顔が赤くなる、ならないは必ずしも一致しないように思う。顔が赤くなるのは、もしかしたら体から発信される何らかのサインなのではないのか? そこで今回は、成増厚生病院 東京アルコール医療総合センターでセンター長を務める垣渕洋一先生に話をうかがった。

「お酒を飲んで顔が赤くなり、さらには血圧が上がったり、冷や汗をかく、動悸がするなど、複合的な症状を『フラッシャー』と呼びます。顔が赤くなるのは、体内でアルコールが代謝される際に発生するアセトアルデヒドの毒性が大きな原因です」と垣渕先生が説明してくれた。

憎っくき「アセトアルデヒド」が原因!

「アセトアルデヒドの作用で、顔などの毛細血管が拡張されることで顔などが赤くなります。さらに、アセトアルデヒドは交感神経の刺激作用がとても強力です。これにより脈拍が上がり、その結果として、血圧が上がり、冷や汗が出る、筋肉が緊張するなどの症状が引き起こされるのです。これがフラッシャーの原因です。さらにアルコール本来が持つ血流を促す作用も手伝って、顔の赤さが助長されるというわけです」(垣渕先生)

二日酔いの原因ともなる、憎っくきアセトアルデヒドが、顔が赤くなる原因を握っていたわけか。ちなみにフラッシャー状態が慢性化し、鼻や頬の一部が飲んでいないときでも赤くなる症状を「酒さ」(しゅさ)と呼ぶ。いわゆる「酒焼け」といわれる状態だ。

酒を飲めば、誰もが体内にアセトアルデヒドが発生するのに、何故、私のように赤くならない人もいるのだろうか?

「実は顔が赤くなる、ならない人の差には、アセトアルデヒドを分解する『アセトアルデヒド脱水素酵素』(英語の略称はALDHで、1・2・3の3つの型がある)が大きく影響しています。ALDHの1つである『ALDH2』の活性は、その人の遺伝的要素によって決まります。ALDH2の活性には人によって生まれつきの強弱があり、3タイプに分類することができます」(垣渕先生)

アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性がカギ

体内に入ったアルコールの約9割は肝臓で代謝される。その際、アルコール脱水素酵素によって、アルコール(エタノール)はアセトアルデヒドに分解。その後、『アセトアルデヒド脱水素酵素』により、アセトアルデヒドは無毒な酢酸になり、肝臓から排出される。このALDHのうち、ALDH1とALDH3は、個人差が少ないが、ALDH2は個人差が非常に大きく、その差が酒に強いか弱いかを決めるカギを握っているのだ。

ここできちんと3タイプの違いを知っておこう。

ALDH2が安定で正常な動きをするのが「活性型(NN型)」。両親から、分解能力が高いとされるN型を受け継いだ人だ。自他ともに認める酒豪で、酒を飲んでも赤くならないノンフラッシャーがほとんど。

2つ目は「不活性型(ND型、低活性型と呼ぶ場合もある)」。分解能力が高いN型と、分解能力が低下したD型をそれぞれ引き継いだタイプで、まったく飲めなくはないが、基本的には酒に弱くなる。普段からアルコールに親しんでない場合、顔も赤くなりやすい。

3つ目はALDH2が完全に失活した「失活型(DD型)」。両親からD型を引き継いだタイプだ。酒に弱いどころか、まったく飲めないといったほうが正しく、ほとんどの場合がフラッシャー。奈良漬けを食べた程度でも真っ赤になってしまうのがこのタイプだ。

ちなみに、日本人などの黄色人種の場合、活性型は50%程度、不活性型が40%程度で、失活型が10%程度となっている。一方、白人や黒人はほぼ100%が活性型だ。

垣渕先生が、酒を飲んで顔が赤くなることと、ALDH2の関係性がよくわかる事象があると、こんな話をしてくれた。

「アルコール依存症の治療に用いる抗酒剤という薬があります。これを投与すると、ALDH2の活性がブロックされます。つまり薬の力によって、強制的に失活型にしてしまうのです。すると、例え活性型であっても、失活型同様、少量飲んだだけでも動悸(どうき)が激しくなり、顔が真っ赤になります。抗酒剤を服用したアルコール依存症の患者が病院を抜け出して、コンビニなどでお酒を買って飲んでしまうことがあるのですが、すぐに真っ赤になるので、お酒を飲んだことがすぐわかります。真っ赤になるだけでなく、頭痛、嘔吐(おうと)、めまいなどの非常につらい症状も出ます」(垣渕先生)

うーむ、抗酒剤のお世話にだけはなりたくないものだ…。

顔への出方には個人差があるので注意

こうした事例からもわかるように、酒を飲んで顔が赤くなることと、ALDH2の活性には強い関係があるのだ。だが、冒頭でも少し触れたように、お酒の強さ(≒ALDH2の活性)と、顔が赤くなることが一致しないケースがあるように思うのだが、これはどういうことだろうか。

「先ほど説明したように、顔が赤くなる原因は主にアセトアルデヒドにあります。このため、ALDH2の活性が高い活性型の人はノンフラッシャーがほとんどで、失活型ならフラッシャーが多くなります。ですが、毛細血管への反応には個人差があり、必ずしも一致しないケースが見られます。珍しいケースになりますが、失活型なのに顔が赤くならないノンフラッシャーの人もいます」(垣渕先生)

不活性型は食道がんにかかりやすい?

なるほど、顔が赤くなることと、ALDH2の関係性はおおむね理解できた。では、それぞれのタイプで気を付けるべきことはあるのだろうか?

「活性型はお酒に強い分、多量飲酒が常習化しやすいので、アルコール依存症に陥りやすい傾向にあります。失活型はともすれば重篤な状態になるので、お酒を無理強いするのは厳禁。酒席のノリでお酒を勧められても、『飲めません』とはっきり辞退しましょう。また先ほども触れたように、失活型でノンフラッシャーの方もいます。顔が赤くならないからといって、お酒を飲ませると急性アルコール中毒など、重篤な症状に陥ることがあります。注意してください」(垣渕先生)

垣渕先生いわく、「3つのタイプの中で一番注意すべきは不活性型」だという。

「中でも注意しなくてはいけないのは、不活性型でほどほどにお酒が飲める方です。こういうタイプは『お酒は鍛えることで強くなる』を体現した方です。もともとALDH2活性が低く、アルコールには弱いのに、アルコールを飲み続け、アルコール代謝を繰り返すうちに、ALDH2の活性が徐々に高くなるのです。つまり、こういう方は、飲み続けることでアルコール耐性がアップしている状態にあります」(垣渕先生)

アルコールは基本的にALDH2によって分解されるが、大量飲酒をした場合、薬物代謝酵素も誘導され、アルコール代謝に寄与する。これが、いわゆる「酵素誘導」の仕組みである。垣渕先生によると「不活性型でも恒常的な飲酒を続けることによっても、酵素誘導が起こり、アルコールの分解能力が高まるので、顔も赤くなりにくくなる」そうだ。これだけを聞くと、「酒に強くなるのなら良いのでは?」と考えてしまうのだが、そんな単純なことではないらしい。

「もともと不活性型はALDH2の活性が低く、アルコール耐性が弱い。酵素誘導によってアルコール耐性がアップしたとしても、活性型に比べると酒も残りやすく、アセトアルデヒドの毒性に長くさらされるというリスクがあります。それによって咽頭がんや食道がんの罹患率が高くなる傾向が見られます。実際、私が勤務する病院でも、入院中の検査によって、食道がんなどが発見されることがかなりの確率であります」(垣渕先生)

なお、国立がん研究センターの多目的コホート研究において、飲酒と食道がんには強い関連があるという結果が出ている。飲まない人に比べ、1日当たり1合から2合飲む人たちは2.6倍、2合以上飲む人は4.6倍高くなっている(Cancer Lett.;2009,18,275(2):240-6)。

この研究では、顔が赤くなる体質との関係についても調べている。それによると、「飲酒で顔が赤くなる体質のヘビースモーカーで、飲酒量が増えると食道がんリスクが高くなる」という結果が出ている。

遺伝子検査で自分のタイプを知るのが一番

失活型はまず自ら酒を口にすることがないにしても、酵素誘導によって酒が強くなった不活性型は特に注意する必要がありそうだ。だが、そもそも自分が「不活性型」かどうかわからなくては始まらない。

「遺伝子検査を受け、自分のタイプを知るのが一番です。自分では活性型と思っていても、実は不活性型だったりする可能性も大いにあります。がんのリスクを回避するためにも初期投資だと思って、専門機関などできちんと検査されることをおすすめします。最近では一般向けの遺伝子検査サービスでもわかります」(垣渕先生)

確かに、飲酒歴が長くなるほど、自己判断で活性型と思い込んでいる人も少なくなさそうだ。ALDH2の活性だけでなく、他の病気の罹患リスクや肥満の可能性を知るためにも、垣渕先生の言うように初期投資だと思って遺伝子検査を検討してもよさそうだ。

予算的に遺伝子検査が厳しい場合は、『アルコールパッチテスト』という手もある。やり方は実に簡単。脱脂綿に市販の消毒用アルコールを含ませ、上腕部の内側にテープで7分間固定し、はがした直後と10分後に、脱脂綿が当たっていた肌の色でALDH2の活性を見るだけ。脱脂綿をはがした後、肌の色が変化しないのが活性型、10分後に赤くなるのは不活性型、直後に赤くなるのは失活型という判定になる。ただ、先ほども説明したように、遺伝子的に失活型の人でも赤くならない人もまれにいるので、正確に自分のタイプを知りたい場合は遺伝子検査のほうが正確である。

「いずれの方法であっても、自分のALDH2のタイプを知ることは、がんをはじめとするアルコールによる疾患リスクを回避し、普段の飲み方を一考するきっかけになります。一度検討してみてください」(垣渕先生)

学生時代から、「やれコンパだ、一気飲みだ」を経験して、酒に強くなった左党も世の中には多いはず。だが、酒豪だと思い込んで飲みすぎ、がんのリスクを高めてしまっていたという事態は避けたいものだ。一方、酒に弱いのに顔が赤くならないため、上司などから酒を無理強いされて困ったという人もいるのではないだろうか。

こうした事態は自分のALDH2のタイプを知っていれば回避できるはずだ。お酒との付き合い方を決める上でも、「自分がどのタイプか」を把握するのはとても重要。忘年会シーズンの前に、まずは「アルコールパッチテスト」を試す。余裕のある方は遺伝子検査サービスを受けてみてはいかがだろうか?

垣渕洋一(かきぶち・よういち)さん
 成増厚生病院・東京アルコール医療総合センター長。1994年、筑波大学大学院医学専門学群博士過程修了。同大学附属病院などでの研修の後、2002年より成増厚生病院に勤務。臨床業務に加え、日本精神科看護技術協会、日本精神病院協会、地域の保健所、自助グループなどで講師としても活動中。「セルフケア・シリーズ アルコールこうしてつきあう」(保健同人社、2008年)の監修などを手掛ける。

(エッセイスト・酒ジャーナリスト 葉石かおり)

[日経Gooday 2016年9月30日付記事を再構成]

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