つぶらな瞳に短い前足 ヘビのような姿のミミズトカゲ
ヘビのようにも、ミミズのようにも見える映像の生物。足をもたないミミズトカゲの仲間で「アホロテトカゲ」(Bipes biporus)という。今回は、トカゲの中でも変わり者の、この生物を映像とともに紹介したい。
米ラトガース大学ニューアーク校の爬虫類学者サラ・ルエイン氏は、落とし穴式トラップを設置した数時間後、捕まったものを見て興奮した。「信じられませんでしたし、ただびっくりしました」
彼女を驚かせたのは、アホロテトカゲだった。というのも、この種は地中で生活し、地表にいることが滅多にないからだ。
2017年6月にルエイン氏がアホロテトカゲと出合ったのは、メキシコのバハ・カリフォルニア・スル州サン・ファニーコだ。「島と海」という野外研修コースの一環として、今回の動画を撮影した米カリフォルニア大学バークレー校の大学院生ケイトリン・クレイビル-ヴォス氏と共に、生物多様性調査のための落とし穴を仕掛けていた。
アホロテトカゲは、ミミズトカゲの1種として知られている。ミミズトカゲは見た目はヘビそっくりだが別の種で、トカゲともまったく異なるグループとされてきた。遺伝子を分析した近年の研究では、トカゲの仲間(カナヘビ科)に近いことが示唆されている。
長さは20センチメートルほどしかなく、地中に暮らしており、淡いピンク色をしている。地表近くに張られた根の間に潜み、主に昆虫をエサにしている。
1980年代に行われた最初のアホロテトカゲのフィールド調査では、収集された2000匹を超す個体のうち、地表で発見されたのはわずか3匹だった。ルエイン氏は遠征中に2匹を見つけたのだから、喜ぶのは当然だ。
アホロテトカゲは珍しいものではないが、日の当たらないところで生活しているため、その姿を見たいと思っている人は見つけると驚き、興奮する。とはいえ、この足のないトカゲがこの地域で必ずしも愛されているわけではない。「アホロテ」という名には、「妖精」や「妖怪」という意味がある。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2017年7月5日付記事を再構成]
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