夫転勤でも女性社員働き続けて 藍沢証券、転籍後押し

「連携事業を通じて双方に成果があがる中、その担い手である従業員にとってもメリットが大きいと考えたのが、配偶者の転勤などに伴う転籍制度の導入だった」。角道氏は説明する。親の介護などに伴う転居も対象とし、男女どちらでも転籍できる。対象となる従業員については人事考課情報を両社が共有し、給与や賞与は高い方に合わせる。対外的な役職だけでなく、社内の資格等級についても引き継ぐためのルールをつくった。介護していた親が亡くなった場合などに元の企業に戻ることも可能だ。有給休暇も引き継げる。

配偶者にも「良心の呵責」減らすメリット

藍沢証券に転籍した清水友梨亜さんは「キャリアを無駄にせず、ステップアップできる」と話す

配偶者の転勤などの際、転職先を紹介する企業は徐々に出始めている。例えば、地銀では似たような制度として「地銀人材バンク」があり、64行が参加。退職せざるを得ない行員を転居先の銀行に紹介し、紹介を受けた銀行は自行の基準に基づき採用するかどうか判断する。

ただ、異なる業種間で人材を受け入れ、ここまで徹底して待遇を引き継ぐルールを定めて、キャリアアップを継続できる仕組みは珍しい。藍沢証券は西京銀行に続き、17年12月には第一勧業信用組合と、18年9月には岡山県に本店がある笠岡信用組合と、それぞれ同様の枠組みを導入。今後も提携先を増やしていく予定だ。

業務提携している会社が相手のため、転籍した社員は元の会社をよく知っている即戦力として貢献を実感しやすい側面もある。社員同士が相互の会社を知っていることも、転籍者にとって心理的な不安を軽くしてくれる。実際、冒頭に紹介した清水さんの場合も「着任したばかりの頃、周りの人に『西京さんから来た人でしょ』と言われて不安が和らいだ」と話す。

本人だけでなく、配偶者にとってもメリットがある。清水さんに続いて西京銀行から転籍した原田千明さんの場合、夫の転勤がきっかけだった。当初、人事交流制度があることを知らなかった夫は「自分のせいで妻のキャリアを断ってしまうのは申し訳ない」と良心の呵責(かしゃく)を感じていたそうだが、この制度のおかげで心の負担が軽くなったと話しているという。

制度の導入は採用活動にもよい影響をもたらしている。来春の新卒採用活動では、計画に比べて1.3倍の応募があり、「7割の学生がこの制度について高い評価をしていた」(角道氏)。この結果、内定者の女性比率は約20ポイント上昇したという。既存の社員にとっても、こうした制度があれば結婚に伴って退職せざるを得なくなる可能性が低くなり、働くモチベーションが高まるだろう。