あなたの「顔の形」を引き立てるネクタイの選び方
ファッションプロデューサー 五十嵐かほる

秋の気配が感じられるようになりましたが、ネクタイをするには、もっと涼しくなってほしいところですね。前回掲載「あなたの『顔形』を引き立たせるシャツを探そう」に続き、今回はネクタイについてのお話。顔形に合った柄や結び方をお教えします。
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■顔幅が広いタイプはノットを大きく



体格の大柄な方にも当てはまるのですが、ネクタイのノット(結び目)が小さいと相対的に顔が大きく見えて、圧迫感を与えてしまいがち。そこで、第1回「あの人が似合うものが、あなたに似合うとは限らない 」でご紹介した、同じ大きさの円であっても、周りを大きな円で囲まれていれば小さく、小さな円で囲まれていれば大きく見える「エビングハウス錯視」を活用。結び目が大きな三角形となる「ウィンザーノット」や、縦長となる「ダブルノット」などの結び方でノットを大きくし、顔とのバランスを取ります。
また、レジメンタルストライプなどはっきりとした柄や比較的大きめの柄などを選ぶことで視線をVゾーンに向けやすくなり、顔幅が目立たなくなります。また、しっかりとした厚地の素材でも顔が負けないので、よほど細いネクタイでない限り、あらゆる素材を選ぶことができます。
■顔幅が細いタイプは小さめなノットで



顔幅の細さに合わせて、ノットを小さめに仕上げます。貧弱で安定感のない印象を与えないためで、小柄な方や痩せた方にも当てはまります。「プレーンノット」という基本的な結び方で良いでしょう。また、無地やドット柄、小紋柄など、おとなしい印象のものを選ぶことで、顔の存在感を高めます。
存在感を示したいからと派手なネクタイをしたり、厚地の素材を選んだり、ノットを大きくしてしまうと、かえって虚勢を張った暑苦しいイメージになったり、無理して頑張っているようなやぼったい印象になったりしまいかねないので、ご注意ください。
■ネクタイにもトレンドが
柄、結び方、共にトレンドがあるのをご存じですか?
ニューヨークの大手弁護士事務所を舞台にした米国の人気ドラマ「SUITS/スーツ」。英王室ヘンリー王子と5月に結婚したメーガン妃が出演していたことでも知られますが、登場するスタイリッシュなイケメン弁護士たちのスーツコーディネートも注目され、本国では、彼らの着こなしをまねるビジネスマンも多いといわれます。
特に日本で放映中のシーズン7(正式には前作のシーズン6から)では、出演者たちがこぞってネクタイのノットをこれでもかと大きく結んでいます。そう、これがニューヨークのトレンドというわけ。
「え?顔幅に合わせるっていったじゃない」と聞こえてきそうなのでお答えしますが、彼らは、ネクタイをウィンザーノットにしていようが、ノットがどれだけ大きかろうが、顔も印象も濃いので、そう簡単には負けません(笑)!


さて、今度は柄についてですが、叔父さんからもらったとか、上司が引っ越しの際にドーンとくれた…など、色々とお下がりのネクタイをお持ちの方は多いと思います。ただ、下さる方がおしゃれで良いものをたくさん持っている方ならいいのですが、多分下さる方も、もう自分には派手だなとか、コーディネートに悩む柄だとか……お下がりにした何らかの理由があるはずなのです。
そして、柄も素材も古臭いネクタイを締めていると明らかに「残念な人」になってしまうため、いただいたものでも必ず吟味して選んでみてください。
おしゃれ男子の間では、クラシック回帰が流行り、1980~90年代風の柄が復活してきていますが、まだまだ、私はソリッド(無地)推し!です(特にネイビー)。
「コーデのポイントにしたいから」と、何となく柄物のネクタイを選ぶ方が多いのですが、ネイビーのソリッドは、シャープな印象を与えてくれるし、コーディネートするにも簡単ですのでお薦めです。
ネイビーといえば、日本でもさまざまな制服に採用されていますが、日本人の肌に最も似合う色だから、ともいわれています。
■海外でのレジメンタルは要注意
ネイビーが、イギリス海軍の制服の濃紺を指すことは、ご存じの方も多いでしょうが、レジメンタルのネクタイを海外で着用するのは要注意ということをご存じでしょうか。
レジメンタルとは英語で「連隊の」という意味。その名の通りレジメンタル柄は、英国の連隊旗の柄や配色を起源としており、身に付けることで、自身が所属している証となっていました。学校やクラブ、チームなど、所属する組織を表すため、海外での使用はお薦めできません。
その昔、海外出張に出向いたビジネスマンがレジメンタルタイを締めてミーティングに臨んだところ「君は、どこのチームにいたの」と聞かれたことがあったとか。英国などではクレストやロイヤルクレスト(紋章・家紋)を用いたものはご法度です。日本でいえば、よその家の家紋の付いた羽織を着ていることになってしまいかねません。

さて、以下、ネクタイの基本的な織りの種類を紹介します。
(1)サテン
光沢感のあるスーツに合わせるとよい。素材の良しあしが一目瞭然。シルクがベストだが、ポリエステルの物も多い。
(2)ツイル
綾織(あやおり)といい、斜めに走る畝が特徴。ツヤ感があるものが多い。
(3)ジャカード
ジャカード織機で織り上げた生地の総称で、フラノやツイードなどマットな(ツヤの無い)起毛感のあるスーツに合わせるとよい。
(4)フレスコ
立体的な作りで清涼感があり、ざっくりとしたメッシュ状の織り。春夏ものとして捉えられているようだが、オールシーズン使用可能。
(5)ニット
メリヤスとも呼ばれ、カジュアルな印象や個性的な印象になる。
ちなみに私の一押しは、ネイビーのソリッドタイのなかでも、フレスコ織のネクタイです。立体的ですし、高級感があってお薦めです。光沢感がありすぎず、ややツヤがある位の落ち着いたものを見つけてくださいね!
イラスト出典:「桁外れの結果を導く 一流の男の演出力」(日本能率協会マネジメントセンター刊)

スタイルファクトリー社長、パーソナルスタイリスト協会代表理事。武蔵野美術大学短期大学部卒、全日本空輸で国際線客室乗務員として勤務した後、独立。エグゼクティブを中心にしたスタイリングやファッションプロデュース、研修などを手がける。著書に「桁外れの結果を導く 一流の男の演出力」など。
前回「あなたの『顔形』を引き立たせるシャツを探そう」もお読みください。
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