密室脱出・探偵になり街歩き… 謎解きイベントに人気
ビルの一室や迷路からいかに脱出するかなどを競う「謎解きゲーム」の人気が広がっている。企業やアニメ作品とのコラボレーションで気軽に参加できる施設が生まれ、「探偵」として街に出て実際の店を訪ねる街歩きタイプも現れた。人気の秘密はどこにあるのか。東京都内で実際に体験してみた。
2017年12月、東京・歌舞伎町にオープンした「東京ミステリーサーカス」。全国で謎解きイベントや専用施設を運営するSCRAP(東京・渋谷)による謎解きテーマパークだ。ここでは常時、10以上の謎解きイベントが楽しめ、家族連れやカップルでにぎわっている。
まず体験したのは「絶望トイレからの脱出」。お笑いコンビ、サバンナの高橋茂雄さんと共同制作の脱出ゲームだ。隣り合うトイレに閉じ込められた2人が、アイテムなどを使って謎を解き、15分以内に脱出方法を見つける。ひらめきと2人の協力が不可欠だが、私はひらめかないまま時間オーバー。
SCRAP広報の小杉綾乃さんは「情報共有と役割分担が成功のコツ。ひらめかなかった悔しさで、帰り道も盛り上がる」と話す。協力型の脱出ゲームは企業の社員研修にも利用されている。「良くも悪くも性格が出る」と小杉さん。
アジトに潜入、試される体力
次に挑戦したのは潜入ゲーム「THE SECRET AGENT 最終兵器ヲ破壊セヨ」。スパイになり、敵のアジトに潜入し兵器を破壊するのが目標。各ゾーンにミッションがあり、クリアできないと次には進めない。
専用ベストを着込み、タブレット型の端末を装備して、いざ潜入。暗い部屋には敵の監視兵が巡回しており、見つかると撃たれ、残り時間が減る。監視兵の目を盗みながら、ミッションをクリアする過程は、かくれんぼや鬼ごっこに似ている。
最大の特徴は、謎解きに加え、アトラクション的要素が盛り込まれている点だ。行く手を阻む仕掛けやワナをクリアするには、運動能力も必要。制限時間の30分で終わらず、時間延長を重ねてクリアしたときには達成感と同時に、運動後のような疲労感が襲ってきた。
脱出ゲームのファンという20代女性は夫と一緒に初挑戦。「脱出は頭を使うだけだが、こちらは体も使う。監視兵が本当に怖い。最初は慎重になりすぎて時間切れになってしまった」と話し、夫も「また挑戦したい」と答えた。
歌舞伎町歩き、聞き込み調査
最後は、実際に街を歩き回る「歌舞伎町探偵セブン」。参加者は、新人探偵になって、地図と情報を基に、依頼された事件を解決する。歌舞伎町内の店などを聞き込みに回り、ヒントを探しながら謎を解く設定。歌舞伎町全体を使った大人の探偵ごっこだ。
聞き込みに回るキャバクラや雑居ビルの中のバーは、本物で、恐る恐る扉を開ける瞬間も楽しい。クリアまでは約2時間。普段とは違う歌舞伎町を堪能した。友人との集まりの前に挑戦したという大学生の女性2人組は「普段行くことのないタトゥーのお店やバーに入れるのが面白かった」と感想を話す。
SCRAP広報の小杉さんは「楽しむコツは、どれだけ物語に入り込むか」とアドバイス。アニメやゲームとのコラボ作品が多い理由は「基本の設定がしっかりあるので、プレーする方も物語の世界に入り込みやすい」からだという。
一方でイベントとして謎解きを企画する企業も出ている。東急百貨店(東京・渋谷)は、夏休み企画として謎解きイベント「東横ハチ公探しています」を8月4~15日に開催。本店と東横店を巡り、行方不明になったキャラクターの東横ハチ公を探す設定で、ファミリー層を中心ににぎわった。
同社MD計画部・MD推進部統括マネジャーの比佐泰章さんは「館内での滞在時間を楽しんでもらえるイベントとして企画した。家族一緒に楽しめ、建物全体を巡るので、普段使わないフロアも訪れてもらえる」と話す。孫と一緒に、美容院のついでに立ち寄ったという60代女性は「孫も謎解きは好き。一緒に楽しみたい」と話していた。
年代を問わず、共有する時間や空間も楽しむことができる謎解きゲーム。ひらめいたときの爽快感に加え、本気の「ごっこ遊び」は、ひとときの非日常につながる。
(ライター 李 香)
[日本経済新聞夕刊2018年8月25日付]
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