「お世話様」がない後輩にモヤモヤ
脚本家、大石静さん
子育てを終え、育児休業中の女性職員の代わりで昔の職場に復帰しました。それはいいのですが、若い女性職員が「育児のため」と当然のように仕事の途中で帰宅するのに複雑な思いです。私の頃の育児休暇はたった1年で無給。こんなに手厚い支援があったら私も仕事を続けられた、と嫉妬しているのかも。でも、後に残って仕事をする職員に「お世話様」の一言くらいあっても……とつい思ってしまいます。(東京都・女性・50代)
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お気持ち、よくわかりますし、おっしゃることは当然です。
私は会社員ではないですが、ドラマ作りの現場でも、打ち合わせの真っ最中、育児のためと堂々と席を立つスタッフを見ると心が萎えます。正義を振りかざしたような態度はどうなのかしら? ちょっとくらい申し訳なさそうにしたら? と言いそうになりますが、そういう時代なのだと思って飲み込みます。
しかし、あなたもおっしゃるように、退席の仕方があると思うのです。「申し訳ないけど、後をよろしくお願いします」とか「お世話様です」の一言はあって当然なのに、それをしない人が多いのは問題ですね。
少子化で国も「産め」「産め」と言いますし、産まないのは生産性がないとまで言い切った政治家もいます。なので、今の時代に子供を産む人は、誰よりも何よりも大事にされて当然だと思う傾向にあるのでしょう。
ではどうしたらいいか?
やはりそこは年上の社員か、上司がきちんと教育しなければならないと思います。「お世話様の一言くらい、後に残る人に言いなさい」と教育してほしい、と上司に直訴なさったらどうでしょうか。
うるさい奴と思われてしまいますかね。通じる上司もいるように思いますが……。
あるいは、あなた自身が先輩として「一言挨拶してから帰りなさいよ」と言ってもいいと思います。それに反発したりするでしょうか、その人は。もし通じれば、その人もまた次の世代に、そのことを伝えてくれると思うんですが、甘いですかね。
どんな時代に生まれるかは、宿命です。あなたが育児のために仕事を諦めなければならなかったことは本当に無念ですが、過ぎた時間は戻らないし、今を生きる人に嫉妬しても、辛くなるだけです。
お気持ちはよくわかりますが、変化して行く価値観は認めながら、人として守るべき「挨拶」などの普遍的な礼儀は、あなたも勇気を持って、下の世代に伝えてみたらどうでしょうか。
[NIKKEIプラス1 2018年8月18日付]
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