ゆず・山下達郎… 音楽業界もクラウドファンディング
年々成長を続けるクラウドファンディング市場が音楽業界の注目を集めている。この1、2年で、山下達郎やゆず、超特急といった人気ミュージシャンたちが続々と活用し、彼らのCDセールスを後押しするプロジェクトも生まれている。大手ライブハウスグループも参入を始めた。
クラウドファンディングは、日本では2011年ごろからサービスを始める事業者が登場。矢野経済研究所がまとめた16年度の国内市場規模は約746億円で、前年の約2倍に成長した。ミュージシャンの利用は、以前はインディーズのアーティストや無名のアイドルらが目立ったが、今や多くのメジャーアーティストが活用し始めている。
11年に立ち上がったクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」では、17年1月にラップシンガー、ぼくのりりっくのぼうよみが、ウェブ上にオウンドメディアを立ち上げるプロジェクトで700万円を集めた。ポップバンドのクラムボンも、日比谷野外音楽堂のライブを映画監督・岩井俊二によって映像化するプロジェクトで2700万円を集めている。
レコチョクが運営する音楽特化型クラウドファンディングサイト「WIZY」では、山下達郎が昨年8月に発売したアルバム「COME ALONG」のカセットテープ版を予約販売して約800人が購入。他にも、「LUNA SEA」が最新アルバムの発売記念で製作したオリジナルキャリーバッグを、5月末まで予約販売した。
そのWIZYが新しく取り組むのが、ミュージシャンが作品を発売する際に、オリジナルの付録を付けた特別盤を受注販売すること。
ゆずは17年12月発売のライブDVDに、公式キャラクターのキーホルダーを付けた特別盤をWIZY上で販売し、約2000人が購入。6人組の超特急は、4月発売のシングル「a kind of love」に、17年の春ツアーのライブ映像ブルーレイを付けたWIZY盤を制作。約6000人が購入した。
超特急の販売促進を担当するスターダストレコーズの阿部恭久氏は、「予想以上の反響がありセールスに貢献してくれました。完全受注生産なのでリスクコントロールにもつながった」と語る。
全国に6店舗を展開するライブハウス最大手のZeppグループも「若手ミュージシャンの支援」を掲げて参入した。
第1弾として、3月にCAMPFIREを使い、Zepp TOKYO(3000人収容)で新人アーティストの草ケ谷遥海がフリーライブを開催するプロジェクトを実施。目標金額100万円に対し250万円が集まり、4月19日に無事ライブが開催された。若手育成が目的のため、ライブハウス使用料は通常の半額。集まった金額から使用料を引いた全額がアーティストの取り分だ。
これには「ライブハウスの有効活用」という意図もある。Zeppホールネットワークの萩原要氏は「通常は公演日まで3カ月を切ると販売が難しい。クラウドファンディングは、空き日となっていた平日のライブ開催の可能性が広がる」と語る。今後は全国のZepp系列のライブハウスでも実施していくそうだ。
クラウドファンディングで事業のリスク軽減が期待できるとなれば、音楽業界からの参入はさらに広がりそうだ。
(「日経エンタテインメント」6月号の記事を再構成 文/中桐基善)
[日経MJ2018年6月15日付]
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