アニメ『ひそねとまそたん』 女子と竜が自衛隊で奮闘
社会現象となった実写映画『シン・ゴジラ』で監督を務めた樋口真嗣が総監督として久々にテレビアニメに挑戦。航空自衛隊に勤める女子たちがドラゴンが擬態した戦闘機へ。『ひそねとまそたん』は一見ファンタジックながら実にリアルな「お仕事もの」。その真意を、樋口自身が語る。
古来日本で守り神としてあがめられてきた竜(ドラゴン)。今は航空自衛隊の格納庫の水槽に!? 一方、素直で真面目だが嘘がつけない性格で無意識に人を傷つけ、「誰からも必要とされてない」と感じる主人公・甘粕ひそねは、ふと空を飛ぶ戦闘機を見て、進路希望調査用紙に「航空自衛隊」と書く――。
『ひそねとまそたん』は、主人公のひそねのほか、クールでプライドの高い星野絵瑠ら女性パイロット5人と心優しいキュートなドラゴン・まそたんらが繰り広げる、笑って泣けて時々真面目なお仕事ストーリーだ。
シリーズ構成を担当する岡田麿里(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』)との出会いが今作につながったそうだが、近年実写映画に軸足を置く樋口が、なぜ今「オリジナルのテレビアニメ」だったのか。
「最近自分が見たいものを誰も作ってくれないので、自分が作るしかないというか(笑)。岡田さんとやるならオリジナルですよね。テレビアニメだったのは、映画は2時間で終わらなきゃいけないけど"つづく"ほうがいいなって」
樋口が目指したのは「誰も作っていないアニメ」。ゼロベースから話し合いが始まり、スタッフィングが行われた。とっかかりはキャラクターデザイン原案の青木俊直だ。NHKの『おかあさんといっしょ』など子ども向け番組内のアニメ制作を手がけ、丸みのある愛らしい絵柄が特徴だ。
「人格に問題のある女の子がドラゴンに乗る。この女の子をいとおしく、かわいく見せたい。それには、青木さんの絵しかないと思いました」
この他にも、メインメカニックデザインに『マクロス』シリーズの河森正治、モンスターコンセプトデザインに『ベイマックス』のコヤマシゲトなど、トップクリエイターが多数参加。
「アニメーションでしかできない物語ではないけれど、アニメでやるならこういう表現だろうという答えが今作です」。そして「最終的にはみんなに、自分が感じている『仕事はいいよ、楽しいよ』というのを伝えたい」。ただ、「ひそねの成長を物語のゴールにしたくない」という。
「自衛隊を舞台に選んだのは、仕事をするうえでの要求が厳しいから。甘えが許されない厳しさがまず基本にあって、それを乗り越えるには1人では解決できない。だからこそ描けるものがあると思っています」
他にも緑豊かな基地周辺など手描きで美しい背景、80年代を意識した劇伴など、樋口のこだわりが盛りだくさん。「毎週目まぐるしく展開していくので見逃さず見てほしい。何より、ひそねというキャラクターを愛してほしいですね」
(「日経エンタテインメント」6月号の記事を再構成 文/山内涼子 平島綾子 写真/辺見真也 敬称略 (C)BONES・樋口真嗣・岡田麿里/「ひそねとまそたん」飛実団)
[日経MJ2018年6月8日付]
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