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「管理職になりたい」は2割 成長意欲高める施策を 働く女性2000人意識調査(下)

2018/1/23 日本経済新聞 朝刊

キャリア・チャレンジ制度に参加した明治安田生命保険の女性社員。他部署での勤務経験で得た気づきを共有し合う

 働く女性の4割が仕事にやりがいを感じている一方、管理職になりたい人は2割にとどまることが、日本経済新聞の2000人調査で分かった。数値目標を掲げ女性管理職の育成に取り組む企業は増えているが、管理職志向は低調だ。リーダー育成の課題を探る。

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 調査によると、現在の仕事にやりがいを感じている女性は4割。年代別では30代が42.2%と最も高く、40代が36.0%で最も低い。

 管理職志向を聞いたところ、「なりたいと思う」は2割。思わない人は6割に達した。仕事にやりがいを感じている層でも、管理職になりたいと思う人は24.8%にとどまった。国は2020年までに指導的地位に占める女性の割合を3割にするとの目標を設定。企業も管理職の育成に力を入れるが、女性の意識とのギャップは大きい。

 なぜ管理職志向を持つ女性は少ないのか。早稲田大学大学院の谷口真美教授は「管理職志向を持つよう育成されてこなかったことに加え、リーダーのモデルが固定化されていることも背景にある」と分析する。「強い指導力があり、仕事で成果を出せる人」というリーダー像と自分とのギャップを感じ、「向かない」と思い込む女性が多い。「リーダーの在り方は多様でいいとなれば、自分なりのリーダーシップを考えられるようになる」とみる。

 「管理職が魅力のない仕事に見えている」と指摘するのはリクルートワークス研究所の石原直子主任研究員。働き方改革やコンプライアンス(法令順守)の徹底など、管理職の負担は増す一方。家庭や育児との両立は困難と感じる女性は多い。「企業は中間管理職に集中する負荷を分散するなど、管理職の役割を見直す必要がある」と指摘する。

 女性自身の意識が、活躍にブレーキをかけている面もある。「キャリアアップよりワークライフバランスを重視したい」「結婚相手には自分より多く稼いでほしい」という女性は8割を超えた。「夫の出世に響いたら困るからと、共働きでも家事育児を引き受けている女性は多い。個人の意識改革や行動改革が重要だ」と石原さんは話す。

 個人の意識には、男女の賃金格差や税制など社会の仕組みの影響も大きい。女性活躍が進まない理由(複数回答)で「配偶者控除など女性の働く意欲をそぐ制度の存在」をあげた人が2割いた。「男性が働いたほうが得」と意識づける制度の見直しも課題だ。

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 女性にいかに成長意欲を持ってもらうか。企業は試行錯誤を重ねる。

 女性管理職を20年までに14年度の3倍以上にするとの目標を掲げるホンダ。特徴的なのは、女性社員や現場の納得感を重視する施策だ。「なぜ女性活躍が必要か、女性自身や現場のマネジャーがふに落ちなければ進まない」と向後睦子多様性推進室長は話す。

 人材の多様性を経営の重点課題に据えた14年以降は推進担当者が現場を回り、取り組みの意義を説明。女性社員とキャリア面談を重ね、個人の意向を踏まえたうえで育成する仕組みをつくった。

 17年11月には主任層の女性を集めダイバーシティフォーラムを開催。30~50代の女性社員400人を前に、八郷隆弘社長が直接期待を伝えた。「会社が本気だと伝えるとともに、刺激を受けて成長意欲を持ってもらいたい」(向後室長)。役職にかかわらず、活躍する女性を増やすことを目指す。

 人事制度を見直し、活躍を促す企業もある。明治安田生命保険は総合職と一般職の職制区分の見直しを15年から段階的に進め、17年4月に一般職を廃止。全国型と地域型の総合職に再編した。

 旧一般職には、ずっと同じ支社や営業所で働いてきた女性が多く、再編後のキャリアへの不安が大きかった。広い視野を得るとともに、様々な選択肢があると認識してもらうため、管理職一歩手前の女性を対象に「キャリア・チャレンジ制度」を導入。希望者は、他の職場での仕事を数日間経験できるようにした。

 17年は145人が他部署での業務を経験。ほかにも階層別研修やメンタリングなど、それぞれのキャリアに応じた成長の機会を提供する。「様々な施策が風土を醸成し、キャリアアップしたいという女性が増えてきた」(ダイバーシティ推進室)と、手応えを得る。

 「多様性を生かす力は組織にすぐに備わるものではなく、トライ&エラーを重ねる中でついていく」と谷口教授。「企業も女性も、小さな成功体験を積み重ねることが大切だ」と話す。

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■「ロールモデルいない」81%

 働く女性がロールモデルとして憧れる著名人を2000人調査で自由回答で聞いたところ、多く挙がったのは俳優の天海祐希さん(2%)や東京都知事の小池百合子さん(1%)ら。ただ、全体の81%を占めたのが「いない」だった。

 東京商工リサーチによると、2017年3月期決算の上場企業2430社で、女性役員は総数の3%。ゼロの企業は69%あった。男女雇用機会均等法の施行から約30年たったが、役員や上級管理職として活躍する第一世代の女性は数自体が少なく、私生活を犠牲にしてきたケースも多い。

 働き方や価値観が多様化する中、すべてを手本としたいような存在を見つけるのは困難だ。複数の人からいいと思うところを少しずつ取り入れ、自らロールモデルをつくることを求められているのが現在の女性たちだ。

 海外をみると「フォーチュン500」に入る米トップ企業で女性最高経営責任者(CEO)は6%にとどまるが、ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラさん、IBMのバージニア・ロメッティさんら著名経営者が浮かぶ。また、フェイスブック最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグさんは夫の不慮の死に遭いながらシングルマザーとして2人の子どもを育てていることで知られる。

【調査概要】正社員・正職員(役員含む)として働く20~50代の女性を対象に2017年12月、調査会社マイボイスコム(東京・千代田)を通じてインターネット上で実施。各年代500人ずつ、計2000人から回答を得た。

[日本経済新聞朝刊2018年1月22日付]

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