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女性活躍「進まず」6割 組織風土や育児との両立が壁 働く女性2000人意識調査(上)

2018/1/16 日本経済新聞 朝刊

古河電気工業の役員向け勉強会後の懇談会。外部講師を囲み率直な意見交換。

 政府が女性活躍推進の旗を振り始めて5年。女性の育成や両立支援に取り組む企業は増えたものの、活躍しやすい環境が整ったとの実感を持つ女性は少数派だ。活躍をさらに進めるために、どんな取り組みを強化すべきか。日本経済新聞が行った2000人意識調査を通じて、女性活躍の現状と課題を追う。

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 「現在、もっとも生かしきれていない人材とは何か。それは女性です」。2013年4月、安倍首相が成長戦略スピーチで女性活躍を成長戦略の中核に位置づけると、大企業を中心に取り組みに力が入った。16年4月には女性活躍推進法が全面施行され、計画的に女性の採用や育成をする企業の裾野が広がった。

 総務省の労働力調査によると、16年の女性就業者数は約2800万人と13年より100万人増加。15~64歳の女性の就業率は66.0%と同3.6ポイント上がった。女性登用も進んだ。厚生労働省の雇用均等基本調査によると、16年度の女性管理職比率は12.1%で、13年度より3ポイント上昇。女性役員がいる企業は45.4%と同8.4ポイント増えた。

 女性の活躍度を示すデータは少しずつ上向いているが、働く女性の実感は乏しい。今回の調査では、自社の女性活躍が進んだ実感がある女性は2割どまり。6割は職場改革が進んでいないと感じている。「女性は補助的な仕事ばかりで、意見も聞いてもらえない」(事務、37)、「この仕事は大変だから女性には無理と言われる」(営業、49)。男性中心の組織風土で、活躍できないとの声が多い。

 活躍推進の実感には属性による差がある。年代別では20代は「進んだ実感がある・どちらかというとある」が25.0%だが、40代は17.6%。子どもありの女性は25.9%に対し、子どもなしは18.2%。入社時から期待を伝えられている世代や、両立支援制度を活用する機会があった層は実感割合が相対的に高い。

 一方、役職なしの女性は管理職層より実感割合が10ポイント以上低い。「自分は活躍推進の対象ではないと思っている女性が少なからずいる。年代や職位を問わず、皆が組織への貢献意識を持てる取り組みが必要」と早稲田大学大学院の谷口真美教授は指摘する。

 仕事と育児の両立のハードルも高い。両立経験者のうち、仕事をやめようと思ったことがある人は半数以上。20代、30代は6割を超す。理由は「時間的な余裕がなく、子どもに向き合えない」が最も多い。総務省の社会生活基本調査(16年)によると、共働きの夫の1日の家事・育児時間は46分で妻の6分の1以下。負担は女性に偏る。

 仕事と子育ての両立に最も重要なことを聞いたところ、「上司や職場の理解」(30.5%)がトップ。「夫の理解と協力」(15.2%)が続く。女性のさらなる活躍には、職場・家庭双方での男性の意識改革、行動改革が不可欠だ。

 「企業が本気で人材の多様性を生かすには、女性の育成や両立に関する部分だけでなく、働き方や業務プロセス、人事評価など組織のシステム全体を見直す必要がある」と谷口教授。男性中心の組織風土や従来の働き方を変えることなく、女性の育成・登用や両立支援だけを進めても効果はあがらないと指摘する。

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■カギは男性管理職の意識改革

 「女性だけに働きかけても限界がある」。そう気づいた企業は、女性活躍の鍵を握る男性管理職層の意識改革を急ぐ。

 塩野義製薬は2017年2月、研究本部の管理職にダイバーシティーマネジメント研修を開いた。同社全体の女性管理職比率8.4%に対し、同本部は6.0%。育成が遅れていた。

 課長以上は原則強制参加。事業開発など女性活躍が進んでいる他部門の男性管理職が女性社員の育成のコツを伝授した。「評価では性別による区別をしなくなったが、仕事の与え方にいまだ男女差があり、女性管理職がなかなか育たない。管理職の意識改革が大きな課題」(人事総務部)

 社員の9割が男性の古河電気工業は女性管理職比率が5%未満。男性管理職が働き方改革や職場環境の改善への理解を深めない限り、女性活躍は進まないとの危機感を持つ。

 17年はワークライフバランスに配慮しながら成果を上げる「イクボス」をテーマにした勉強会を役員と管理職向けに開催。求められる管理職像や部下との接し方を議論した。参加者からは「部下の生活や制約条件を理解し、信頼関係を築く重要性に気づいた」との声があがったという。

 「男女の意識や役割に関するバイアス(偏見)を変えるには時間がかかるが、意識改革に取り組むのに遅すぎることはない。どの年代、立場でも学ぶことは多く、くり返しやらないと浸透しない」とゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井さん。青山学院大学大学院の北川哲雄教授は「トップがダイバーシティ(多様性)の重要さを自覚することに加え、多様性の実現を管理職の業績評価に組み入れるなど、実効性のある取り組みが必要だ」と話す。

【調査概要】正社員・正職員(役員含む)として働く20~50代の女性を対象に2017年12月、調査会社マイボイスコム(東京・千代田)を通じてインターネット上で実施。各年代500人ずつ、計2000人から回答を得た。

[日本経済新聞朝刊2018年1月15日付]

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