男の鉱物、女のジュエル。by Takanori Nakamura Volume 9

時を同じくして、シャツの台襟を高くして、第一ボタンが2つあるデザインが登場。ロザリオというエクスキューズは、ボタンを外して心もとない胸元を飾るための、格好のアイテムというわけだ。各宝飾ブランドが、ダイヤモンドをちりばめた男性用のロザリオをリリースした背景は、そのあたりにあるのだと思う。

ちなみにダイヤモンド・ジュエリーは、18世紀の半ばの欧州のあらゆる宮廷で、絶対的な地位を確立したが、この頃は女性のそれに劣らず男性用宝飾は耽(たん)美と粋を競ったという。

クレア・フィリップス著「V&Aの名品でみるヨーロッパの宝飾芸術」(東京美術)によると、その当時の最高峰と呼び名が高いのが、ドイツのトゥルン・ウント・タクシス侯カール・アンゼルムが1775年に作った、45個のダイヤモンドで壮麗に飾ったボタンのセットであるという。これは、今でもミュンヘンのバイエルン国立博物館に所蔵されている。

■洋の東西を問わず男に欠かせない真珠

念珠の素材には様々な天然素材が使われるが、ファッション性と形状の美しさから、最近は真珠が使われることも少なくない。片手念珠であれば、宗教的な意味合いを超えて、和の装いのアクセサリーとしても活用できそうだ。こちらは好みに応じてオーダーできる片手念珠 Oviri(価格相談 Tel 075-212-6507)

厳密には鉱物ではないが、ジュエリーとしての真珠の存在も忘れてはならないだろう。先のヘンリー8世の装束にも多くの真珠が飾られたが、洋の東西に限らず真珠は男性の装飾品に欠かせない存在である。

仏教宝具から派生した数珠にも、ヒスイや水晶やラピスラズリといった石の他に、最近は真珠が使われるようになった。中でも紫系の真珠は、仏教的に高貴な色であることから、僧侶たちの間でもひそかな人気だという。宗教的な意味合いを超えて、男のジュエリーとして見立てるのも面白いアイデアだと思う。

■「海の泡」の鉱物

ダンディーな石は、何も装飾品に限らない。例えばメシャム・パイプである。僕が、初めてメシャム・パイプを買ったのは、2004年の夏のイスタンブールだった。有名なグランバザールの一番奥にあるメシャムの専門店で見つけた。

メシャムとは日本語で海泡石という。この石は、セピオライトという多孔質鉱物で、含水ケイ酸マグネシウムが主成分である。世にも不思議な鉱物で、磨くと象牙のように美しいマットな乳白色で輝き、目に見えない小さな穴が空いていて、一説によると水に浮くほど軽いことから、ドイツ語の海の泡(Meer Schaum)と呼ばれるようになったとか。

メシャム・パイプは、少なくとも17世紀以降、好事家のパイプとして愛玩されてきた。写真のパイプは、僕がトルコで購入した EYUP SABRI というトルコの人気作家が彫刻したもの。ちなみにトルコ政府は、メシャム原石の輸出を規制していることもあり、最高峰のメシャム・パイプは現地で見つけるのが近道である
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