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Men's Fashion
DANDY & RHAPSODY

2018/4/18

DANDY & RHAPSODY

エス・テー・デュポンのライターは、男を紳士に変える高級品の条件を備えているからである。その理由はなぜか? 独断を承知で申し上げれば、重いからである。ただ重いだけではない。重厚な滑らかさとでも表現したらいいか、ずっしり硬いが、使い心地のフィーリングに面取りがされているのだ。

理由は、ボディー剛性の結果としての重さが、高級感を生んでいるからであろう。重厚な物体に精度が加わると、独特のフィーリングになる。銘刀と呼ばれる日本刀や、あるいは80年代までのベンツやBMWのエンジンもそうだが、重量感の中に独特の官能美が宿っていた。それは普遍的な“高級”のありかたでもあろう。

■重きを軽く、軽きを重く

最近の物づくりは、クルマであろうとスマホであろうと、“軽くてディスポーザル”なことが優先される時代だし、そうしたプロダクトが持つ清涼感もよくわかる。しかし、“重厚な滑らかさ”が、人と物との洗練した関係を結ぶことも確かなことなのだ。

千利休は、『利休百首』という道歌で、点前は「重きを軽く、軽きを重く扱ふ味わいを知れ」と、道具の扱いの極意を今に伝えている。道具との関係に味わいを見いだすあたりが利休の眼力ともいえるが、それは、日本人が年間6億本もの使い捨てライターを消費するようになったあげく、たばこへの点火という、嗜好品本来の優雅さぜいたくさの象徴をも軽んじる、軽佻(けいちょう)浮薄な時代へのアンチテーゼではないだろうか。

なかむら・たかのり
 コラムニスト。ファッションからカルチャー、旅や食をテーマに、雑誌やテレビで活躍中。近著に広見護との共著「ザ・シガーライフ」(ヒロミエンタープライズ)など。

[日経回廊 6 2016年2月発行号の記事を再構成]

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