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結んで、飛来て、蝶ネクタイ。

by Takanori Nakamura Volume 5

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NIKKEI STYLE

岩倉具視は、蝶(ちょう)ネクタイを本格的に結んだ、最初の日本人のひとりであった。岩倉率いる西欧使節団は、明治4年(1871年)から1年9カ月かけて、米欧12カ国を回覧した。その"国家見学"ともいえる視察は、政治・経済、教育など、後の日本の近代化に大きな影響を与えるが、西欧服飾文化もまたしかり。岩倉の蝶ネクタイ姿は、まさにその象徴であった。めったにお目にかからなくなったが、500円紙幣の岩倉具視の肖像も、ちゃんと蝶ネクタイを結んでいる。

文=中村孝則 写真=藤田一浩 スタイリング=石川英治

(6)ライターは、紳士の火付け役。>>
<<(4)あの帽子は、どこへいったのか。

そもそもネクタイの起源は、ローマ時代に遡る。ローマ皇帝トラヤヌスの記念柱に描かれた「ファカーレ」が最古の証拠とするのが定説だ。19世紀までは、紳士のネッククロスは、四角の布を三角に折ったものを、蝶結びにしていた。それが徐々に小さくなって、岩倉が英国を訪ねた1870年代に、ほぼ現在の蝶ネクタイの姿に完成する。

むしろ18世紀のアメリカを発祥とするロングタイの方が、歴史は浅いともいえるが、現在は蝶ネクタイの方が少数派になってしまった。近ごろ日本国内でも、特別なシーンか愛好者を除いて、めったに結ばれなくなった。

■蝶ネクタイの見直すべき利点

ところが蝶ネクタイは、あらためて見直すべき利点も多い。普通のロングタイに比べ、食べ物をこぼす不安もないし、剣先を料理の皿の中に落とす粗相もない。僕の茶道の宗匠は、そのメリットを心得ていて、茶の席で洋装の場合は、稽古であろうと蝶ネクタイを義務付けていた。

蝶ネクタイはタイピンも必要ないから、茶道具を傷つける心配もないのだ。しかも、あらたまった気分も演出できるので、茶に招かれたらぜひとも試してみてほしい。ちなみに、今も私が愛用しているエルメスの蝶ネクタイは、その宗匠が20年前にパリに旅した際に、エルメス本店でみつけてきてくださったものである。

蝶ネクタイは旅先でもメリットを発揮する。普通のタイ一本の平均が、35グラムから45グラムに対して、蝶ネクタイは10グラム以下。軽量でかさばらないし、収納も簡単。かばんにひとつ忍ばせておけば、不意の会食やパーティーでも心強い武器になるはずだ。近ごろは、素材やデザインのバリエーションも豊富だし、あらかじめ蝶結びのものもあるから、機会にとらわれず、もっと気軽に自由に楽しんでほしいと思う。

■絆や縁を結ぶ思いを込めて

ただ個人的には、やっぱり蝶ネクタイは自身で結んでほしいと願う。蝶ネクタイには、「蝶結び」のほかに、「叶結び」や「ねじり結び」「いちご結び」など20ほどの結び方があるから、結び方次第で自在な表現力を与えてくれるはずだ。岩倉だけでなく西欧使節団のメンバーもそれを熟知していてか、使節団の有名な肖像写真の山口尚芳や伊藤博文も、洒脱(しゃだつ)な「尾だれ結び」をしているのである。

そもそも日本において「結ぶ」とは、古来より神道の「むすひ」に通じ、魂や契りを意味している。民俗学者の折口信夫も、むすびは「魂むすび」に通じるというが、その日に出会う人々との友情や絆や縁を結ぶ思いを込めて、蝶ネクタイを結んでみる。もしかしたら思いがけないご縁まで、結ばれるかもしれない。

なかむら・たかのり
 コラムニスト。ファッションからカルチャー、旅や食をテーマに、雑誌やテレビで活躍中。近著に広見護との共著「ザ・シガーライフ」(ヒロミエンタープライズ)など。

[日経回廊 5 2015年12月発行号の記事を再構成]

(6)ライターは、紳士の火付け役。>>
<<(4)あの帽子は、どこへいったのか。

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