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白河桃子 すごい働き方革命

過労自死を招く企業の構造 産業医が見た職場のリアル 産業医・大室正志さんインタビュー(上)

2017/12/14

白河 よく、「自殺するくらいだったら、会社を辞めてしまえばいいのに」という議論があります。でも、実際は判断力の低下によって、会社を辞めることさえ考えられなくなるのでしょうか。

大室 うつ病と診断されるレベルになってしまうと、複雑な判断が難しくなります。会社がつらいとなると、(1)転職をする(2)今の会社に残る(3)上司に相談する--というふうに、複数のプランを比較検討してメリットやデメリットを考えますよね。ところが、うつ病の方は論理思考ができなくなるわけですから、そういう判断ができなくなるんです。この状態に陥る前に対処しなければなりません。

 ある会社では、社風に合わない人を早めに見つけて、うつ病と診断される前に、会社と合うかどうかを議論する仕組みをつくっています。

■働き方改革を錦の御旗に

白河 最近、「健康経営」という言葉が注目されていますね。

大室 経営者は、かつて「労働」と「収益」という2軸を持っていればよかったんですが、今は「健康」を合わせた3軸が必要になりました。お手玉を2つやっているときと3つやっているときとでは、複雑性が全く違います。経営の難易度が上がってきたと感じますね。

 昔の体育会系気質の人は、部下に無理難題を与えて「何とかしろ」としか言いませんでした。

白河 また、それに応えて、何とかする人が評価されていましたね。

大室 確かに最初から否定する人は、ビジネスマンとしては後ろ向きですけれど、やはり無理な仕事は無理なのです。

 しかし、部下が「無理ですよ」と言った瞬間に、上司は「俺を否定したのか」とまるで人格を否定されたように捉えてしまうことが結構多いのです。特に40代以上の課長クラスです。

 こうして不機嫌になってしまった上司を見て、部下は「やります」と言ってしまう。

白河 そこで働き方改革のお触れが出ていれば、とりあえず錦の御旗にできますよね。大義名分がある!

大室 そうです。そのときに大義名分として働き方改革があることは、大きいと思います。部下は、「僕がやりたいのはやまやまなんですが、今のご時世では(働き方改革に沿うと)その期間での対応は難しいんですよ」と言える。

 よく、働き方改革はマジックワードで、中身は何もないんじゃないかという批判をする人がいますが、まずは言葉を独り歩きさせることは重要だと思います。クールビズと一緒ですね。

(来週公開の後編ではメンタル不調を起こさないためのセルフマネジメントと管理職としての役割と対処についてお伺いします)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 森脇早絵)

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