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EDは動脈硬化のサイン! 気になる治療薬の最新事情

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2017/11/13

バイアグラ(一般名シルデナフィル)を含め、現在は3つのED治療薬があります(表1)。特徴を端的にいうなら、硬さを得るならバイアグラ、早く効かせたいならレビトラ(一般名バルデナフィル)、長持ちさせたいならシアリス(一般名タダラフィル)、といったところでしょうか。

※いずれも、ニトログリセリンなどの狭心症の治療薬(硝酸薬)を飲んでいる人、血圧が高すぎる人・低すぎる人、脳梗塞や脳出血・心筋梗塞を起こしてから間もない人などは使うことができない。

脳が出す勃起指令は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)という酵素によって分解されると消えてしまいます。裏を返せば、勃起を持続させるには、勃起指令が分解されないようにすればいいわけです。EDの治療薬はPDE5の働きを阻害する役割を持つことから、PDE5阻害薬と呼ばれます。

どの薬も健康保険(公的医療保険)の使えない自由診療の扱いになりますが、バイアグラにはジェネリック(後発医薬品)も複数出ています。従来のバイアグラと同じ効果で価格は7~8割程度なので(医療機関によって異なる)、使用する人が増えています。

――でも、雰囲気が盛り上がったときに薬を飲むと「中折れ」しそうです。良い方法はないものでしょうか。

確かに、薬を飲むには水がいるし、中断して萎えないように飲むタイミングも考えねばなりません。錠剤をどこに入れて持ち歩くかも悩むところです。

こうした悩みに応えるように、メーカーは年々、剤形の工夫を進めています。バイアグラのジェネリックの中にはラムネのように溶けて水なしで飲めるOD錠[注2]もあります。また、2016年に発売された「バイアグラODフィルム」は、舌に乗せる薄いフィルム形の薬で、こちらも水なしで使うことができる上、薄いので財布の中に入れてもかさばりません。価格はバイアグラのジェネリックと同程度に設定されていることが多いので、今後は錠剤に代わって広く使われるでしょう。

――EDが動脈硬化の前ぶれなら、EDの治療薬は動脈硬化にも効くのではないかと思ってしまいます。実際にそういった使い方はされないのでしょうか。

動脈硬化の予防のみを目的にED治療薬を処方することはできませんが、PDE5阻害薬には血管を保護する作用があるので、ED治療として週に2~3回、少量を使うことで、動脈硬化も改善する副次的効果が期待されています。

PDE5阻害薬は前立腺肥大症にも効果を発揮します[注3]。前立腺肥大症の治療薬ザルティア(一般名タダラフィル)がそうです。商品名や薬の形状が違うだけで、成分はシアリスと全く同じです。

■ネットで購入できるED治療薬の4割は偽造薬

――ED治療薬はインターネットでも購入できますが、病院で処方される薬と違いはありますか。

インターネットで手に入るED治療薬は、約4割が偽造品だという調査があります[注4]。成分の含有量が多くて効きすぎたり、全く含まれなかったりと、悪質な偽造薬が出回っているのです。ネズミを殺す殺鼠(さっそ)剤や、中枢神経興奮作用を持つアンフェタミンを含むこともあるほどです。

偽造薬に多い副作用はほてりです。正規のED治療薬でも多少は出ることがありますが、偽造品では40%を超えます。別の成分が混ざっているか、含有量が多いことが原因だろうと推察します。他にも、偽造薬を使うたびに吐き気、動悸(どうき)、めまいなどが起こるといった情報が製薬会社に寄せられています。

さらに怖いのは、死に至る恐れがあることです。シンガポールでは2008年、ED治療薬の偽造品、あるいはその疑いのある薬による死者が4人も出ました。日本でも数人が意識障害で搬送され、海外で製造された偽造薬を使ったことが分かっています。

――EDで受診する人は多いのでしょうか。

日本人のED患者の受診率は推計8%と非常に低い数字です[注5]。繰り返しになりますが、ED患者は心筋梗塞や脳卒中患者の予備軍です。医療機関を受診せず、さらに偽造薬を使った場合は生命にも関わるので、ぜひ医療機関を受診していただきたいと思います。

受診の目安は、朝立ちとマスターベーションです。若い頃に比べて硬さが足りない、朝立ちが減った、と感じたら動脈硬化が進んでいるかもしれません。50歳を過ぎて気になる兆候があれば、検査を受けることをお勧めします。血糖、コレステロール、中性脂肪などの項目のほか、動脈の硬さを調べる検査も有効です[注6]。受診は、泌尿器科か内科、あるいは血管についての検査設備のある循環器科でもいいでしょう。

[注2] OD錠(Oral Disintegrant):口の中に入れると唾液で速やかに溶けるように作られた錠剤のこと。口腔内崩壊錠とも呼ばれる。

[注3] 前立腺肥大症:加齢などにより前立腺が大きくなり、尿道を圧迫して頻尿や残尿感などの排尿障害が生じている状態のこと。PDE5阻害薬の血管拡張作用により、前立腺周辺の血行を改善して症状を緩和させる。

[注4] 偽造ED治療薬4社合同調査結果2016(調査期間:2016年3~8月)

[注5] ファイザー社による推計

[注6] 両腕・両足首の血圧と脈波を測定することによって動脈の硬さを調べるCAVI(キャビィ)検査。約5分で計測可能。

佐々木春明さん
昭和大学藤が丘病院 副院長・泌尿器科教授。1986年昭和大学医学部卒業。2007年同大学藤が丘病院泌尿器科准教授、2012年より教授。日本性機能学会専門医、ED診療ガイドライン作成委員の1人でもある。ED偽造薬の実態調査「偽造ED治療薬4社合同調査結果2016」の監修にも携わり、TVなどのメディアを通して偽造薬の使用を回避する啓発活動にも積極的に取り組む。

(ライター 田中美香)

[日経Gooday 2017年10月26日付記事を再構成]

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