女性の意識が低いは嘘! 「昭和の価値観」が最大の壁東京大学 大学総合教育研究センター 中原淳准教授インタビュー(前編)

白河 わたしは女性は生来、やる気がないとか、モチべーションが低いという言説はいつも疑っているんです。その過程で女性にやる気を失わせる何が起きているのでしょうか。

中原 女性は、入社2年目で会社やキャリアについて絶望するのです。おそらく、長時間労働や男性中心の職場なども無縁ではないでしょう。実際、「上司のスポンサー機能が乏しい」「職場では男性のほうが優遇されている」と思うのは、女性のほうが多いという調査結果が出ています。

出典:同「女性の働くを科学する:本調査」

しかし、一度、昇進という名の川を渡ると、新しい景色が見えてきて、今度は自己評価が高くなります。リーダーや管理職になると、「リーダーになってよかった」「目標達成できた」と思う人は、女性のほうが多くなるのです。

男性は逆です。実務担当者の時期は自信を持っていますが、リーダー期に入ると自信を失います。ここが面白いところだと思いましたね。

中原先生の研究室にて対談

ワーキングマザーに必要な3つの要素

白河 今回の調査の面白いところは「ワーキングマザー」という項目でも調査していること。ワーキングマザーになると、また違う傾向が出てくるそうですね。

中原 ワーキングマザー500人のうち、「仕事と育児の両立ができている」と思う人は36.8%でした。

白河 意外と低いのですね! そんなものかもしれませんね。「ぶら下がり」と呼ばれる現象も「絶望してやさぐれる」人と思っています。そういう女性たちをたくさん見てきましたから。

中原 そうなんです。7割弱の人がギリギリの状態でやっている。中には「ワンオペ育児」の方もいらっしゃるでしょう。ワンオペとは「育児と仕事の両立」のすべてが、ひとり親にかかってしまう状況です。負担が大きくなれば、すぐにバランスを崩してしまいます。

今回の調査を実施した背景には、「女性活躍を推進するためには、リーダーや管理職になる直前に支援をしても遅い」という考えがありました。極端にいえば、女性活躍推進は、入社時期から始まっているのです。女性が、自らの仕事人生やキャリアを歩み始めたその日から支援が必要です。

白河 さらにいうと、いざ「仕事と家事の両立」が必要になってから、女性活躍を推進しても、遅いですからね。

中原 人事政策的にいえば、新入社員の時期にどのような教育をし、実務担当時期をどのように過ごさせて、リーダー期につなげていくのか。すべてのプロセスを見直して組織開発をしていかなければ、女性活躍推進などできないということです。

白河 そこで女性と男性との間で大きく違うのは、女性だけに「仕事と家庭育児の両立」というワードが出てくることです。本来ならば、男性も「両立」の影響を受けるべきではないかと思うのですが。

中原 その点が面白いですね。一般的に、「仕事と家庭育児の両立はできますか?」という問いは、女性にしか投げかけられないんです。ここからすべての問題が始まっている。

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