ショウガの効いた甘いやつ 冷やしあめは関西以西?
ご当地アイスに冷たいもん(6)
前回、冷やしあめを実際に飲んでみたところ、多くの方から関連情報をいただいた。まとめてご紹介しよう。
阪神大震災で豆腐屋があるような市場は一掃され、近ごろは冷やしあめを見ることはめったにありません。味は、まずくはないのですが子供にとっては、そのころのジュースのほうが好まれたように思います(ダンコースさん)
震災で長田区の被害は大きかった。住民に親しまれていた市場もなくなった。そして冷やしあめもソップも…。
が、そういえばこの辺には全くありません。というより「冷やしあめって何?」って聞かれました。北関東近辺にはないのかも(日曜出勤さん)
当時、流行っていた、CLAMP学園探偵団という漫画に冷やしあめが登場していてとてもおいしそうだったので憧れていたのですが、夢破れたりといった感じです(とおるさん)
以上、2通は京都で飲んだという体験談。サンガリアが大阪のメーカーでもあるし、京都・大阪・神戸は冷やしあめ地帯と断定。
ショウガの効いた甘ーいやつですよね。西原理恵子が漫画の中で「親が止めるはずや」って言ってましたね。あの人も高知なんだなあ(にゃんちゃん)
前回、瀬戸内にもあることが判明したが、高知にも生息。
福井に現存することを祈る。
ドラマ「どてらい男」は1973~77年に関西テレビ制作で放送された。脚本は花登筺(はなと・こばこ)。舞台は大阪・立売堀(いたちぼり)であるから、やはり大阪の風景である。
生まれた札幌や、就職してから過ごした東京では、でくわしたことはなかったと思います(まいけるさん)
福岡にも生息。完全に西日本に偏在する飲み物と断じていいだろう。が、例外が…。
その当時は「これは(もんじゃ焼きのように)東京の下町のドリンクなのかな」と思ったりしていました。
ちなみに神奈川では一度も「冷やしあめ」は目撃しておりませぬ(みなみ@神奈川さん)
現場は今はなき池袋駅の「スナックランド」と思われる。20店ほどもあったろうか。立ち食いのそば、お好み焼き、寿司、カレーなどなどファストフードの店ばかりがワンフロアーにひしめいていた。あそこに冷やしあめがあったとは知らなんだ。
デスクもっと知らなかった! スナックランド、なくなってたんですか。
野瀬 泣くなって。
冷やしあめの正体について、これまで敢えて書かなかった。このメールが来るのを待っていたからである。
それにしても「冷やし飴」のない地域があるなんて驚きました。お隣の韓国でも飴湯の原料になる大麦麦芽が売られていますし、欧米でも「モラセスシロップ(濃縮麦汁)」があります。生姜を加えて冷やして飲めば、「冷やし飴」のできあがり。
さて、関西圏では夏の定番濃縮飲料「冷やし飴の素」は、無晒しの麦芽水飴に砂糖を加え、発酵や腐敗をしない程度に薄めたものです。家庭でも業務筋でもこれを薄めて供するのが一般的です。
ところで「甘酒」が夏の季語なのはご存じですか? そして「飴湯」も同じく暑気払いの飲み物だったことも。
「花より団子」をそのまま幕末浪花のくいだおれガイドブックのタイトルにした『花の下影』という画帳があります。その266番目に心斎橋橋台にあった飴湯の屋台が描かれています。「飴湯」の歴史は古そうですが、どうやら「冷やし飴」は、氷が庶民の手に届くようになってからの飲み物のようです。たかだか100年のコールドチェーンの発達が、清少納言の好物「甘くて冷たいもん」を庶民の食べ物にしたんですね。
先ほど摂州平野飴「あめ嘉」へ行ってきました。相変わらず昔の「とうはん、いとはん」が店番をしてはりました。そのときの「冷やし飴器」画像他を添付致します。「あめ嘉」は「山海名物図繪」にも描かれています(豊下製菓の豊下さん)
「冷やし飴器」の画像は貴重なものである。このようなもので作っていたんですね。豊下さんは、さすがご本業。勉強になりました。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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