スイスのシリアル、ミューズリー

朝食の皿の上には、さらに小さなガラスの器に入った、スイスで誕生したシリアル、ミューズリーもあった。平たく押しつぶしたオーツ麦(エンバク)に果物やドライフルーツ、ナッツなどを加え、これにミルクをかけて硬いオーツ麦をふやかし食べるものだ。羊飼いが食べていた携帯食にヒントを得、スイス人医師のビルヒャー・ベンナーがサナトリウムの患者向けの食事として1900年頃に開発した。

普段からミューズリーは好きでよく食べるのだが、この店のミューズリーはちょっと様子が違った。オーツ麦にかけたミルクの量がいつも私が食べるミューズリーより格段に少なく、全体がもっちりとしていたのだ。

「本来は、スプーンが立つぐらいがちょうどいいと言われているんです」と木村さんが教えてくれる。黄金色のハチミツがかかったミューズリーはねっとりしていて、デザートを食べているような満足感がある。

実はスイス発祥とも言われるお菓子メレンゲ 濃厚なクリームとの相性は抜群

「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」では、朝食以外にも期間限定スイーツなどを出している。スイスのデザートのメニューを見ていたら、日本でもよく知られたお菓子「メレンゲ」があった。メレンゲは、卵白に砂糖を加え泡立てたものをオーブンで焼いたお菓子。

マリー・アントワネットの好物だったと言われ、てっきり彼女の故郷オーストリアの発祥とばかり思っていたが、ベルン州の山間の村マイリンゲン発祥という説もあるらしい。

メレンゲはクリームをたっぷりつけて食べる

今や様々な形でお菓子に使われるメレンゲだが、スイスでは乳脂肪分が多いクリームをたっぷりつけて食べる。濃厚なクリームと一緒に食べるサクサクとしたメレンゲは、シンプルながら本格デザートの味だ。

「これもおもしろいんですよ」。最後に木村さんが薦めてくれたのは「アルプスのハーブ」を使ったスイスのハーブティー。今回のメニュー作りに協力してくれたスイス人が、「このお茶を出すといいと思う」とわざわざ故国から送ってもらったものだという。

スイスのハーブティー アルプスの麓の草原を思わせる

メニューにミントベースのお茶とあったので、普通のミントティーを想像していたら、運ばれてきたのは想像より濃い緑色の液体。コップを口に近づけたとたんむせ返るような草の匂いが広がった。

東京の一角に、ぽっかりアルプスの麓の草原が現れたかのようだった。

(フリーライター メレンダ千春)