パートなのに正社員指導、ひどく疲れます
脚本家、中園ミホ
パートタイマーですが、職場で指導する立場になりました。ところが、教えたことについて、正社員の新人から「こうしたほうがいい」などと的外れな反論をされます。全く働かない40代社員もいて厄介です。みんなに気を使って、毎日すごく疲れます。(東京都・30代・男性)
お疲れさまです。人に仕事を教えるのは、職種や立場にかかわらず大変です。それを任されるのは職場で信頼されている証し。誇りにしてください。
相談文から、今の仕事を愛していることがよく伝わってきます。あなたなしに職場はまわらないだろうとも想像します。とはいえ、多分お給料は正社員より安いし、ずっと働ける保証もない。これは苦しい。「毎日疲れる」のは当たり前ですよ。
あなたのように責任の重い立場になるパートは増えているようです。スーパーの売り場責任者になったり、飲食店の切り盛りをしたり。ただし、処遇は追いついていないことが多い。あなたの職場のように、おそらくパートというだけで軽んじる社員がいることもある。苦しさから逃れる策は2つしかありません。処遇改善を求めるか、よい処遇や環境を求め転職するか。
「ハケンの品格」というドラマで描いたヒロインの派遣社員は後者。同じ職場で働くのは3カ月。それでも仕事が次々舞い込む実力の持ち主でした。
実は彼女のルールには別の理由もありました。職場に情が移る前にやめた方がよいという思い。仕事や同僚が好きになるほど離れがたくなる。でも、正社員以外は責任が重くなるほど処遇が見合わなくなり、つらくなるからです。この心情から答えを探ってはいかがでしょう。
あなたは既に情が移り、処遇とのアンバランスに心が耐え切れなくなっている。私は今の仕事を続けられることを願っていますが、心身の健康も心配です。ここは声を上げて職場を見極めることも必要ではありませんか。「私がパートだから指導に従わない人がいる」と。その結果、職場がなんらかの対策をとれば望みはある。放置するなら、あなたの誇りは、いずれ踏みにじられるでしょう。
もちろん仕事は簡単にやめられないし、よい職場が見つかる保証もない。それでも、ただ耐えるより転職という選択肢を持っていた方がいい。終身雇用が崩れた今、誰もが働きがいのある職場を探し続けることが、自らを守るために必要なのです。
この際、同僚たちにもひと言。正社員も様々なストレスがあるでしょうが、パートや派遣は「社員ともめればクビ」という不安を抱えつつ働いています。
それに国をあげて進む働き方の改革の目的地は同一労働同一賃金。つまり正社員もパートも五分の同僚の職場です。その意識が持てない人は将来、居場所がなくなるかもしれませんよ。真剣に働く同僚の心情に寄り添ってもらえませんか。
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[日経プラスワン2016年11月19日付]
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