ユーチューバー、私もなりたい 動画投稿で高収入TVより身近 中高生支持

舞台上で声援に応えるユーチューバーたち(広島市)
舞台上で声援に応えるユーチューバーたち(広島市)
米国発の動画共有サイト「ユーチューブ」に、自作の動画を投稿して収益を得る「ユーチューバー」が中高生に人気だ。誰でも動画を投稿でき、うまくいけば国内外からも注目を集めることができる。若者たちには、テレビで活躍する芸能人に代わる憧れの職業になりつつある。画面内から抜けだし、現実世界でも活躍する彼らを追った。

9月21日、広島パルコ本館(広島市)10階のライブハウス。ユーチューバー専門の芸能プロダクションUUUM(ウーム、東京・港)が企画したファンイベントには、多くの中高生が来場した。総勢500人。十数人のユーチューバーたちが舞台に姿を見せると、「きゃー」と黄色い歓声が会場を包む。

再生回数27億回

舞台上のユーチューバーたちはスマートフォン(スマホ)ゲームを始めた。画面がスクリーンに映し出され、まるで一緒にゲームをしているかのよう。難しい局面をクリアするたび、会場は沸き上がった。「こっち見て」「手振って」。人気アイドル顔負けだ。

ユーチューブ上には、ダンスや演奏、コントなど様々な動画がある。著作権を侵害しない内容ならば誰でも登録するだけで投稿可能。動画には投稿者の判断で企業広告を掲載でき、広告収入の一部が支払われる仕組みだ。少数だが、独創性の高い内容が人気を博し、生活できるほど稼ぐ人もいる。

国内の著名な男性ユーチューバー「はじめしゃちょー」さん(23)。2012年に開設したメーンチャンネルでは、クラッカー100本を同時発射したり、何十種類もの飲料を混ぜて飲んだりする姿を投稿。総再生回数は27億回(16年9月末時点)にのぼる。撮影現場は自宅。自ら編集もこなし、毎日動画を投稿する。

「はじめしゃちょー」さん(UUUM提供)

高校時代から友人と動画を撮り合うのが好きだった。大学進学後は高校教師を目指し教育学を学んだが「進路に迷った」と話す。既にユーチューバーとしての地位が確固たるものだったからだ。不安もあったが「今しかできないことをやろう」と、ユーチューバーの道を選んだ。

養成する課程も

ユーチューバーになりたい人は増えている。イベントに来場していた高校1年の男性は「動画はほぼ毎日見ている。自分も投稿してみたい」。都内の30代男性はタレント志望だが、ユーチューバーにも興味があるという。「有名になれるのならばユーチューブでもいい」と話す。

ユーチューブは一定の収入を得られ、有名になることもできるという一挙両得も魅力のひとつ。インターナショナル・メディア学院は(東京・新宿)は今春、ユーチューバーを養成する課程を新設した。声優を目指す10~30代の生徒向けに開講したところ、50人以上の申し込みがあった。デビューのきっかけとして動画づくりを後押しする。4人のユーチューバーでつくる「劇団スカッシュ」も、舞台の集客と活動資金集めのために活用する。

活躍の場をユーチューブに求める傾向を、リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「現代版シンデレラストーリーだ」と説明する。「昔の歌手ならば下積みを経てスカウトされるなど長いプロセスを要したが、動画の世界なら一夜にして有名になることができると考えているのでは」と指摘する。

若者の就労観の変化も背景にあるようだ。岡崎所長は「最近の就職説明会では、メガバンクより地域の信用金庫に多くの列ができる」と話す。コミュニケーションを密に取ることができて身近な人に貢献できる「手触り感のある幸せを求めているのでは」(岡崎所長)という。

ファン側の変化も大きい。はじめしゃちょーさんらのイベントに参加した高校2年の女性は「身近な商品を使うなど親近感がわき、おもしろい」と話す。やってみたいが自分ではできない。でも結果が見たいという微妙な探究心もくすぐる。家族でテレビを見る光景も珍しくなった昨今、ネットでいつでも好きなときにアクセスできる動画は魅力的。「テレビはほとんど見ない。芸能人よりユーチューバーが見られる方がうれしい」と女性。

動画では視聴者がコメントを直接送ることもでき、ユーチューバーも返信できる。密な双方向のコミュニケーションと一夜にして有名になれる可能性。若者が憧れる働き方がユーチューバーに集約されているのかもしれない。

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新顔サイト続々と 安定収入は難しく

ユーチューバーについて、ネット業界に詳しい日本総研の東博暢主席研究員は「5年ほど前から存在が一部の人たちの間で確立。徐々に社会に認知されてきた」と説明する。

インターナショナル・メディア学院講師の30代男性ユーチューバーは「妖怪ウォッチ専門チャンネル」を展開。総再生回数は約1億5000万回で「月収は50万円近い」という。

ただし、ユーチューバー専業で生活するには限界も。「ネットを見ない世代を動かすのは難しく、国内では少子高齢化に伴う人口構成の変化もある」(東主席研究員)からだ。動画サイトは次々と新顔が登場、今日はやっていても明日には廃れることもある。「活躍の舞台を現実世界へも広げるか、副業的な収入源として活用するのが理想的」(同)だ。

(田村匠)

[日本経済新聞夕刊2016年10月5日付]

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