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全社員が日数制限なくテレワーク IT系上場企業が導入 ネットワンシステムズ(前)2011年にスタート

日経DUAL

2016/10/20

日経DUAL

 ダイバーシティー、女性活躍の推進策の一環として、テレワーク制度を導入する企業が増えている。しかし、コストや運用の難しさを懸念し、二の足を踏んでいる企業も少なくないようだ。

 ネットワンシステムズは、2016年1月、日本テレワーク協会が「テレワークを導入・活用した、またはテレワークの普及に貢献した企業・団体」を表彰する「テレワーク推進賞」において、奨励賞を受賞した。同社では2011年にテレワーク制度を導入。全社員の6~7割が利用するまでに浸透している。

 「残業時間の抑制、ペーパーレスによる経費削減、出張費・移動費のコスト削減などの効果が数字で表れているほか、社員同士のコミュニケーションの質・量が高まった。育児中の社員が早いタイミングで復職できる、時短勤務ではなくフルタイム勤務で働ける、といったメリットも生まれている。コストはかかったが、プラス面のほうが圧倒的に多い」と、人事部長の下田英樹さん。

 具体的にどんな変革を行ったのか、テレワーク制度導入に伴う障害や課題をどう乗り越えてきたかを語っていただいた。

■対象者も利用日数も、制限を設けずにスター

 ネットワンシステムズは、経営戦略として「ICTを利活用したワークスタイル変革」を推進。仮想デスクトップ、ビデオ会議、Web会議、チャット、画面共有などの各種コラボレーションシステムを全社員に導入している。ワークスタイル変革の一環として、また、「成果重視」の人事制度にシフトしていく狙いもあり、「在宅勤務」「リモートワーク」をセットにした「テレワーク制度」を2011年にスタートした。

ネットワンシステムズ・人事部長の下田英樹さん

 他社と比べて特徴的なのは、最初から利用制限を設けずにスタートした点にある。一部の社員を対象にするのではなく、最初から全社員が対象。利用日数も無制限だ。

 「人事としては、利用条件を絞った『スモールスタート』を考えていたんですが、経営との議論を踏まえ制限を取り払いました。工夫できる余地を最大限残し、想定しなかった事例も引き出しながら、横展開していこう、と。もちろん問題も生じましたが、5年たった今も当初の方針のまま運用しています」(下田さん)

 導入後、「リモートワーク」を活用し、営業職の自由度が高まった。会社に戻る必要がなく、移動時間を削減できたことで生産性がアップ。一方、「在宅勤務」については、マーケティングや経営企画など、利用しやすい職種から徐々に広がっていった。

■ワーママが「全社員対象」を歓迎

 制度は、女性社員の約3割を占めるワーママ(ワーキングマザー)にも歓迎されている。ワーママの中には、週3日、一時期で最大4日、テレワークを行っているケースもあるという。

 「全社員を対象にしているので、育児中の社員達からは『自分達だけが特別扱いされているわけではないから、利用することに対して後ろめたさを感じなくてすむのがいい』という声が上がっています」

 そう語るのは、人事部の牛島幸さん。牛島さん自身、3人の子どもを育てている。

 「導入以前は、子どもの学校での個人面談や保護者会など、30分や1時間の用事でも半休を取らなければなりませんでした。今では、行事がある日はテレワークとし、『少しだけ抜ける』ということができます。前は、『あの案件が止まってしまっている。この仕事もたまっている』『明日、早く出勤しなければ』という焦りが大きなストレスでしたが、それがずいぶん改善されましたね。それに、以前は忙しいときは学校行事に参加することもできず、『ママ、どうして来ないの』と寂しい思いをさせたことも。今はすべて参加できるので、子どもも喜んでいて、親子の関係が保てていると感じています」(牛島さん)

移転したオフィスは、まるで自然の中で仕事をしているような雰囲気

■導入のカギは、既存制度の整理とポジティブなメッセージ発信

 利用制限のないテレワーク制度を導入するに当たり、人事担当者はどんな準備をしたのだろうか。

 「厄介だったのは人事制度の見直しです。徹夜連続勤務、直行直帰、シフト勤務など、様々な勤務制度があったのですが、テレワーク制度とどう共存させるかについて頭を悩ませました」(下田さん)

 当初は、「裁量労働制」を主任クラスまで拡大しようとしていたが、労使協定を取り付けられなかったという。エンジニアが6割を占める組織では、一部の社員に仕事が集中したり、地方と都市圏ではリソースに差があったりするという現状がある。そうした環境で一律の時間外労働を見なしていく制度を導入するのは士気に関わる、時期尚早である、という声が上がり、断念した。

 「何より、『裁量労働制の導入には、人件費カットの狙いがあるのではないか』というネガティブな捉え方をされてしまった。しかし、すぐに方針を変更し、フレックスタイム制度の導入に切り替えたんです。これはうまくいきました」(下田さん)

 フレックスタイム制度の導入に当たっては、勤怠管理がずさんになったり、社員が朝出社しないことで業務に支障を来たしたりすることが懸念されていた。しかし、「一人ひとりが工夫することで働き方を変革していく」というポジティブな姿勢でメッセージを送り、社内のコンセンサスを得ることができたという。

 そして、制度導入と同じタイミングで、オフィスの移転、オフィスレイアウトの変更、フリーアドレス制(固定席を設けず、社員が自由な席で仕事をするスタイル)への転換、ツールの拡充を実施。社員の間で「変わっていく」というモチベーションが高まり、意識変革が一気に進んだ。

 こうして制度とオフィス環境を一新。しかし、当然ながら不安や課題も生じた。最も大きいのは「コミュニケーション」の問題。フリーアドレス制やテレワークにより、これまで当たり前のように目の前にいたメンバーと顔を合わせる機会が減ることになる。

 しかし、チャットツールやビデオ会議システムなどを活用することで、コミュニケーションの質・量が以前より高まったという。ネットワンシステムズでは、どのようなツールをどう活用しているのか、明日公開の後編で紹介する。

(ライター 青木典子)

[日経DUAL 2016年8月24日付記事を再構成]

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