メルセデスの新SUV BMWの牙城を崩せるか
2016年を「SUVイヤー」にするとしているメルセデス・ベンツ日本は、その第3弾となる3車種を発表した。最上級モデルの「GLS」と「GLE」のメルセデスAMGモデル「メルセデスAMG GLE 43 4MATIC」を発売。さらに、クーペスタイルのSUVである「GLEクーペ」を発表し、予約受付を開始。発売開始は、16年8月ごろとなる予定だ。
「Sクラス」と同等の質感や装備を持つGLS
GLSは、メルセデス・ベンツのSUVシリーズ「GL」の最上級モデルで、3列シートで7人乗車が可能な大型モデルだ。これまでは「GLクラス」と呼ばれていたが、フラッグシップセダン「Sクラス」と同等の質感や装備を備えていること示す「S」の文字を追加。今回の改良で内外装、装備がより充実したという。エントリーグレードのディーゼルモデル「GLS350d 4MATIC」から、最上級グレードの「メルセデスAMG GLS 63」まで4タイプが用意され、税込み価格は1070万~1900万円となる。
「AMGスポーツ」のメルセデスAMG統合第一弾
ミディアムクラスのGLEに追加したメルセデスAMGの新グレード「メルセデスAMG GLE43 4MATIC」は、メルセデスAMGが開発した367psを発生する3.0LのV6ツインターボエンジンを搭載したスポーツモデルだ。メルセデスAMGモデルのエントリーグレードにあたり、メルセデスAMGの高い性能を持ちながらも価格を抑え、日常での扱いやすさも重視しているという。
15年、メルセデス・ベンツ以上メルセデスAMG未満の立ち位置で誕生したメルセデス・ベンツの新シリーズ「AMGスポーツ」。スポーティさを際立てながらも価格は抑えめとし、幅広いユーザーにメルセデスAMGテクノロジーを愉しんでもらうモデルだった。しかし、誕生したが第1弾として投入された「C 450 AMG 4MATIC」(セダン/ステーションワゴン)の立ち位置の分かりづらさから、「AMGスポーツ」シリーズは1年で終了し、「メルセデスAMG C 43 4MATIC」と名称を変更。つまり450から、メルセデスAMGモデルを意味する2ケタの43へと名称を改めた。メルセデスAMGエントリーとなる「メルセデスAMG GLE 43 4MATIC」は、税込み価格が1150万円となり、最上位の「メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC」の1740万円よりもグッと抑えられている。
SUVラインアップの6番目として投入したGLEクーペは、GLEをベースにした流麗なルーフラインを持ちながら、後席スペースは快適な広さを確保しているのが特徴だ。ラゲッジルームも650Lから最大1720Lとなり、実用性も十分だ。
エクステリアは、GLEらしさを取り入れた専用デザインで、精悍なフロントマスク、Sシリーズのクーペを彷彿させるリアスタイルなど、スポーティーかつ美しい仕上がりだ。インテリアは、スポーティーなシートと小径ステアリングを標準装備し、GLEよりも傾斜が強められたフロントガラスも相まって、クーペらしいスタイリッシュでパーソナルな空間が演出されている。それでも前席はもちろん後席でもゆとりがあるのは、さすがメルセデスのSUVだ。
グレード構成は、クリーンディーゼルを搭載するエントリーモデル「GLE 350d 4MATICクーペ」、エアロ外装、AMGスポーツシートなどを備えたアップグレードモデル「GLE 350d 4MATICクーペ スポーツ」、AMGエントリーのスポーツグレード「メルセデスAMG GLE 43 4MATICクーペ」、そして最上級のAMG高性能モデル「メルセデスAMG GLE 63 S 4MATICクーペ」が用意されており、価格は890万~1780万円。
GLEクーペ投入でSUVクーペのBMW独擅場を崩せるか
近年のSUVブームを追い風に、2016年をSUVイヤーとした効果もあって、メルセデス・ベンツ日本のSUVの販売台数は15年同様に好調な推移を見せているという。
第一四半期だけですでに約1万8000台を販売し、輸入車ブランドでナンバー1の座を勝ち取っているが、このうち24%はSUVだったという。また東京・六本木のメルセデス・ベンツコネクションに隣接するNEXTDOORで開催中のSUVエクスペリエンスも好調で、SUVのオフロード走行を同乗体験した2000組の70%が、40代以下の若い世代だったというのも驚きだ。
販売台数を見ると15年同時期よりやや減少してはいるものの、クーペスタイルのSUVといえば、これまではBMWの独擅場だっただけに、GLEクーペ投入効果への期待は大きいだろう。またメルセデスのSUVのラインアップがほぼ出そろったことで、ユーザーがより自分の用途に適したモデルを選びやすくなった面もある。SUVイヤーをうたうメルセデスのSUVが、どこまで伸びるのかは、SUV人気の今後を占ううえでも、年末まで目が離せないポイントだ。
(文・写真 大音安弘)
[日経トレンディネット 2016年5月18日付の記事を再構成]
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