「失敗したから今の自分がある」 関根近子さん
資生堂執行役員常務
高校卒業後、地元・山形で資生堂の美容部員(現BC)になり、約20年現場にいた。子会社での営業を経て、56歳で未知の国際事業部に異動したが「ワクワクした」と英会話を習い始め、昨年BCから初の執行役員常務に就いても気負いがない。昨秋出版した著書で義母との関係の悩みや仕事の失敗談も披露し「失敗したから今の自分がある」とはばからない。
最初の挫折は入社6年目。販売促進用の特設コーナー担当になり、声をかける相手は買う気がないので嫌な顔をされたり遠回りされたり。「仕事に誇りが持てず、辞めたくなった」。そこで先輩にかけられた言葉で開眼する。「商品を売るためでなく、お客様が価値を感じるよう商品や知識をアレンジする」と、顧客の満足をまず考えるBCとしての信条を固めた。
「お客様が喜ぶ声をもっと聞きたい」と張り切っていた38歳の時、子会社「ディシラ」に出向することに。最初は泣いて嫌がった新規事業への出向が大きな経験になる。
資生堂の看板のない化粧品ブランドでのゼロからの営業。そこで目標以上を売り上げ、顧客を大事にする営業が着実に売り上げを伸ばすと再認識した。ところが2003年に営業本部長になった途端、売り上げにこだわってしまった。会議の席を成績順にしたり部下を皆の前で叱責したりし、部下が離れていった。
女性が初めて就く役職で結果を示そうとした。「結婚、出産後もそうだったが、自分が道を切りひらいていく責任があると思うと、そこに集中してしまう」と振り返る。顧客第一の原点に返り収めたマネジメントの失敗を経て「他人を動かそうとするより、まず自らが姿勢を見せて主体的に動く人を作ろうとした」。
資生堂で激戦地の大阪支店長に就いても、不得手は人に任せ、接客経験などの他人にない強みを生かそうと努めた。30代後半に出合った「プラス思考」の影響も大きい。
30年ぶりの山形での講演で、かつて自分が渡したアドバイスプランを持参した女性の姿に「改めてやりがいを感じた」。14年に前身の誕生から80年を迎えたBC。100年を見据え、全世界に2万人以上いるBCのあり方を思案している。
(女性面編集長 橋本圭子)
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