カジダンへの道 2回目の育休、目標は2カ月
ノバルティスファーマ社長 綱場一成氏
今年の12月下旬、我が家に第3子となる三男が誕生する予定だ。外資系企業でフルタイム勤務している妻の出産に合わせて、2回目の育児休業をできれば2カ月取りたいと考えている。
1歳8カ月になる次男が生まれたときは、育休を2週間取得した。私たち夫婦の親は遠くに住んでいて、産後は二人で乗り切るしかなく、私の育休取得はいわば必然だった。
初の育休中は主に、当時2歳だった長男の世話をして過ごした。朝は弁当を作って保育園に送り出し、夕方迎えに行って食事を与え、風呂に入れて寝かしつける。さらに日中は妻や生まれたばかりの次男の世話や、洗濯などの家事に明け暮れた。
子煩悩な両親の愛情をたっぷり受けて育った私は、子どもには自分の親と同じように接しようと思っていた。先日も次男がむずかって夜中の1時に目を覚ましたので、3時まで抱っこして歩き回って寝かしつけた。
2週間の育休を経験し、妻が日ごろやっている家事量がよくわかった。保育園からの連絡や持ち物を確認したり、食材の宅配やネットスーパーの注文をしたり、これまで自分がしていなかった家事全てを一手に引き受けてみて、その大変さを身をもって知った。同時に、自分1人でも子どもの相手はできるかな、と少し自信がついた。
日本の潮流を見ると、上場企業の経営陣や管理職による育休取得はまだ少ない。スタートアップやベンチャー企業の経営者が、続いて男性社員らが育休を取れるのが「育休1.0」なら、規模が比較的大きい企業、保守的な業界に属する会社の男性社員が取得できる環境が「育休2.0」だ。それが実現しない限り、男性の育休も男女共同参画も進まないと思っている。
日本は出るくいが打たれる社会だが、出ないとくいは周りから見えない。社内のSNSでは「綱場が育休を取った」と紹介された。「社長が取ったなら、あなたも取れるでしょう?」と奥さんに言われた男性もいるという。育休を取った男性社員は2017年は7人、18年が18人だったが、19年は上期だけで28人に上った。
ノバルティスは現在、各国の拠点で21年までに男女問わず14週間の有給の育休を制度化する準備を進めている。私自身の経験からも、2週間の育休は非常に短かったと感じている。「産後の床上げ」という言葉があるように、体が回復に向かう約1カ月間は妻にできるだけ体を休めてもらえるよう、私が家事・育児をするつもりだ。
一方で妻は「1カ月は休んでほしいが、それ以上いてもらっても困る」そうだ。現時点では出産直前から1カ月間休み、その後は「1週間仕事して、1週間休む」または「3日仕事して、2日休む」といった計画を立てている。コラムでは育休計画の進捗やルポも紹介していきたい。
東大経済卒。米デューク大MBA取得。総合商社を経て米イーライ・リリーで日本法人糖尿病領域事業本部長や香港、オーストラリア、ニュージーランド法人社長を歴任。2017年4月から現職。48歳。
[日本経済新聞夕刊2019年10月29日付]
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