肉質細やかダシ濃厚 特産地鶏「青森シャモロック」
青森シャモロックは青森県の誇るブランド鶏だ。ヒナは宮内庁御料牧場に出荷され、飼育されている。青森県は昔から養鶏が盛んだったが、ブロイラー生産に陰りが見え始めたため、県は食味の良い独自の地鶏の開発に着手。20年の歳月を経て1990年に誕生した。
肉のうまさを味わうのならやはり焼き鳥だろう。まず青森県十和田市の繁華街にある焼き鳥専門店のシャモしげを訪ねた。ここでは様々な部位の炭火串焼きを楽しめる。モモ、ムネは肉質が細やかでシャモ特有の硬さはなく、さくっと歯が入る。レバーは上品な味だ。店主の中野渡一茂さん(43)は「青森シャモロックを備長炭で焼く店は少ないが、リーズナブルな価格で提供しています」と話す。
肉の次はスープ。青森市のレストランTera(テラ)は、青森シャモロックを丸々1羽使った参鶏湯(サムゲタン)をメニューに掲げる。コクのあるダシそのものを楽しんでもらうため、スープに調味料は使わない。肉は好みで塩こしょうする。オーナーシェフの田辺慎一郎さん(44)は「生の高麗人参、ナツメ、ニンニク、青森県産モチ米などを使い、体にもいい料理」とアピールする。
青森シャモロックの開発に20年もかかったのは「肉のうまみ成分量や歯応えなど食味だけでなく、ヒナの発育状況や飼料など生産の効率性も考えて様々な種を交配し、選抜を重ねてきたから」(青森県産業技術センター畜産研究所の植田祐介部長)だ。その結果、父親は味や歯応えに定評のあるシャモを改良した横斑シャモ、母親は肉質が良くてダシが良く出る横斑プリマスロックに決定した。
ブランドを維持するため飼育・出荷管理も厳格化している。約20の指定農場のみで飼育され、放し飼いで一般のブロイラーの2倍の期間をかけて育てる。出荷前の2週間はニンニク粉末を添加した飼料を与える決まりだ。
指定農場の一つ、グローバルフィールド(青森県五戸町)の保坂梨恵社長は「ニンニク粉末を食べさせることで肉のくさみがなくなる」と話す。同社が運営する五戸町の直売所では、青森シャモロックの精肉だけでなく、レトルトカレーやスープのもと、かつお節ならぬ「鶏節」なども販売している。
青森シャモロックには、さらに飼育に手をかけた「青森シャモロック ザ・プレミアム#6」がある。青森県六戸町の3農場が町の新しい特産品をつくろうと、通常の青森シャモロックを育てるとともに、2016年から出荷している。
飼育期間をさらに3割程度延ばし、たんぱく質を通常より約10%増やした飼料も与える。延長期間の飼育密度を1平方メートル当たり3羽以下(通常5羽以下)に抑え、活発に活動できるようにして肉のうまみと歯応えを増した。
(青森支局長 山田伸哉)
[日本経済新聞夕刊2019年10月24日付]
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