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食いねぇ「押しずし」 せっかち浪速のスローフード

かんさい食物語

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NIKKEI STYLE

森の石松も食す

「飲みねぇ、飲みねぇ、おぅ、すし食いねぇ、江戸っ子だってね」「神田の生まれよ」――。大阪八軒家から京の伏見に向かう淀川の三十石船の上。幕末のアウトロー、遠州森の石松が、親分の清水次郎長を「街道一の親分」と褒めた江戸っ子に酒とすしを振る舞う。浪曲「石松三十石船道中」の有名な一節だ。

すしといっても石松たちが食べたすしは江戸前の握りではない。船に乗る前に大阪本町橋で買い求めた「名物の押しずし」だ。大阪では元来、すしといえば押しずしのことを指した。その代表格は、一級の具材を酢飯の上にのせて木枠で押した「箱ずし」だ。

「船場は舌の肥えた商人たちによって食文化が発展したところ。押しずしも旦那衆の嗜好によって船場ならではの独自の進化があった」。そう語るのは、箱ずしの基礎を築いた大阪船場・淡路町の老舗、吉野寿司の7代目、橋本卓児さん(39)。「江戸前の握りがファストフードなら、大阪の箱ずしはスローフードです」

二寸六分(約8センチ)四方の木枠の中に酢飯を詰め、タイ、エビ、アナゴなどの具材をのせて押す。これを「男性なら一口、女性なら二口で食べてもらえる」ように6切れに切り分ける。焼き物や煮物、酢の物がそろうことから「二寸六分の懐石」と称されてきた。

誕生したのは明治初期。吉野寿司の3代目が考案した。それまではサバなどの大衆魚を使っていた箱ずしを、タイやエビなど高級な種に替え、新しい箱ずしに仕上げた。

口の中でネタと酢飯が合わさり、相乗効果でおいしく

もともと箱ずしは観劇の客などが買い求めたものだ。押すのは米の間の空気を抜き、保存性を高めるため。客がどのタイミングで食べるかも考えて押し加減を調節する。「かみしめて味わっていくうちに口の中でネタと酢飯が合わさり、相乗効果でおいしくなっていく」(橋本さん)

江戸で誕生した握りずしが大阪に入ってきたのは1800年代初頭。関東大震災後に、関西に移住した東京のすし職人が本格的に広げたが、そんな中でも主流は「大阪ずし」だった。

 転機は戦後。食糧統制ですし店は表立って営業ができなくなり、1合の米と握りずし10個(大阪は握りずし4個と巻きずし4個)を交換する委託加工なら許された。それが全国に広がり、大阪でも、すしといえば「握り」が定着する。一方、手間ひまがかかる大阪ずしの店は減り、今では数えるほどに。それでも時代の風潮に流されない老舗の味は健在だ。

全国的に知られる「バッテラ」は1891年(明治24年)、大阪・順慶町にあった「寿司常」が大阪湾のコノシロ(コハダの成魚)を開いて酢じめにして舟形の押しずしを作ったのが始まりだ。「形が大阪の水上警察の小型ボート、ポルトガル語で『バッテーラ』に似ていたことから、店のお客さんがバッテーラと呼ぶようになったと聞いてます」と4代目の石川里留(さとる)さん(50)。値段が上がったコノシロから、漁獲が安定しているサバを使うようになり、いつしか愛称もバッテラに変化した。

大阪・天神橋に移転した「寿司常」は3代目が亡くなって閉店したが2016年夏、30年ぶりに同じ場所に復活した。石川さんは吉野寿司で修業を積んだすし職人で、奥さんが3代目の孫。「大阪ならではのおすしを食べたいと、欧米のお客さんも来てくれます」

江戸時代から続く老舗「すし萬」の「小鯛雀鮨(すずめずし)」は、もとはボラの稚魚の江鮒(えぶな)を背割りにして塩漬けにし、そこに酢飯を詰めたもの。茶褐色の膨れた腹が雀の形に似ていて「雀鮨」と呼ばれたが、8代目が京都御所に献上する際、西宮沖の小鯛を雀ずしに仕立てた。小鯛と酢飯、昆布の風味が調和し、かむほどに上品な甘みが広がる。

蒸しずしを蒸す湯気 かつての風物詩

蒸しずしの存在も忘れてはならない。店先の蒸籠(せいろ)からすしを蒸す湯気が立ちのぼる光景は、ひと昔前までは大阪の冬の風物詩だった。

創業120年を超える大阪・桜川の「寿し寅」では、3代目の小林利朗さん(84)が昔ながらの味を守っている。蒸しずしのルーツは店の「まかない飯」。「寒いとき、ご飯は明くる朝になったらカチカチになる。ええ方法はないかいなというので蒸してみたら案外おいしい。それが進化した」

冷えた酢飯に甘く仕込んだシイタケを混ぜて丼に敷き詰める。錦糸卵、栗、イカ、アナゴ、キクラゲをのせ、じっくり蒸し上げること20分。「なんでもかんでも、おいしいから入れるもんとちゃいまっせ。合うもんと合わないもんがある。人間でもそうでっしゃろ」。蒸すことで具材の味が酢飯に染み込む。ちょっとした蒸し加減の違いで味も変わってしまうから、その加減が難しいという。

天下の台所と呼ばれた大阪。そこで花開いた「大阪ずし」は浪速の食文化の結晶だ。吟味を重ねた素材を使い、酢飯の案配からネタの仕込みまで手間ひまをかける。その技と流儀は今も脈々と受け継がれている。

(岡本憲明)

かんさい食物語の過去記事はこちら

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