目の前でワクワク調理 アパレルが京都にドーナツ店
ドーナツの調理の様子を間近で見られるのが「koe donuts」(コエ ドーナツ、京都市)だ。カジュアルアパレルのストライプインターナショナル(岡山市)が3月に開いた同店は、広いオープンキッチンを備えて製造工程を可視化し、有機小麦を使うなど素材にもこだわる。ナイフとフォークで食べるドーナツも用意。新たなドーナツ像を提案する。
同店はストライプインターナショナルが展開する主力ブランド「koe(コエ)」の世界観を練り込んだドーナツ店だ。地元客に加え、観光客も多い阪急京都線河原町駅近くの新京極商店街(京都市)の一角に店舗をかまえる。5月下旬のある平日に訪れたところ、午前中にもかかわらず、店内は子供連れやインバウンド(訪日外国人)客でにぎわっていた。
入り口近くには店内で作られたドーナツが並ぶ。五色豆が載ったものや、きな粉が振りかけられたものなど和の印象を与える商品も多い。店のデザインは建築家の隈研吾氏によるもので、天井を覆うように竹かごが配置された店内にも和のイメージが漂う。
目をひくのが、広い店内を縦断するように設置されているオープンキッチンだ。ガラスで覆われた空間をのぞくと、石臼で小麦粉をひいている。その先ではフライヤーの中でドーナツが次々と揚げられていく。一人で来店し、カウンターに座って調理工程を眺める客も散見された。
「店内での飲食時に特別な体験を提供したいと考えた」。コエ事業部、飲食統括の源城篤志氏はオープンキッチンを設けた理由をこう説明する。持ち帰ることの多いドーナツを店内でも楽しんで食べてもらいたい。そこでイートイン専用のメニューも考案した。
「ドーナツメルト ストロベリー」は、カウンター席の前でスタッフが盛りつける。ドーナツにイチゴやクリームが飾り付けられていく様子は待つ楽しみを増幅させる。完成した見た目はドーナツというよりケーキのよう。ナイフとフォークで切り分けるという新たな食べ方を提案する。
同店は先に立地が決まっており、その後コンセプトを決めた。新京極商店街という国内外の老若男女が集まる場所では、誰にとっても身近なスイーツが求められる。こうした背景もあって、ドーナツが選ばれた。
ただ近年、ドーナツは「体に悪そうだ」というイメージが先行し、他のスイーツに比べ人気が落ちていた。コエ ドーナツでは有機栽培の小麦からつくった粉や、平飼いの鶏に産ませた卵などを使いオーガニック(有機)である点を強調している。一部の材料は京都産を使っており、地産地消も訴求する。オープンキッチンには、製造工程を可視化することで客の安心感を高める狙いもある。
今後、京都以外の場所でも店舗展開を検討しているという。国内で実績を積んだ上で海外にも出店する考えだ。「日本生まれの新しいドーナツを広く発信していきたい」と源城氏は意気込む。
(香月夏子)
[日経MJ 2019年6月5日付]
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