精神ストレス軽減して減量 肥満対策に新たな一手

体内で消費する以上に飲食すると肥満になる。体重を減らしたいと思ってもなかなか実行できない。糖尿病や高血圧などの慢性病を招く肥満は、先進国に共通する健康問題だ。よい治療法は見つかっていないが、一部で効果を上げている方法が注目を集める。つい飲み食いしてしまう精神的ストレスを軽減して減量につなげる心理療法だ。

島原病院(京都市)肥満・糖尿病センターの吉田俊秀センター長は1980年代半ば、在籍していた京都府立医科大学で肥満外来を開設して以来、5000人以上の患者を治療してきた。「第一に減量する明確な目的を持つこと。その次に必要以上に飲食する原因であるストレスを調べて取り除く。最後に食事と運動の指導を受ける。この3つが肥満治療を成功させる秘訣です」と言い切る。

■しゅうとめが原因

吉田センター長は、吐き気が続き救急車で運ばれてきた主婦の事例を講演などでよく紹介する。身長160センチメートル台で体重は100キログラムを超え、糖尿病の症状が出ていた。「糖尿病がよくなるのなら減量する」と決心し、治療を始めた。

横浜市出身で京都市内に嫁ぎ、子供を2人産んだ。太り始めた原因を探っていくと、外出するたびに行き先や目的を尋ねるしゅうとめにたどり着いた。返事をするのがいやになり部屋に閉じこもり気味に。テレビを見ながらまんじゅうやケーキを食べる習慣が判明した。

「それはあなたを思いやってのこと。監視しているわけではないよ」「行き先を適当に答えて出かければいい。河原で『うるさい』と叫べばスッキリする」

吉田センター長は巧みな口調で緊張を解きほぐす。主婦も納得し一緒に笑えるようになった。空腹時には菓子の代わりに果物を取り、食事の前にキャベツなどの野菜を食べる減量法を取り入れて症状は改善した。

ストレス軽減に着目したこの方法は「認知行動療法」と呼ばれ、食事と運動の指導とあわせてダイエットに有効といわれる。肥満と結びつけて研究や治療をする実績は日本では少なかったが、国が生活習慣病対策にカジを切り、活発になりつつある。九州大学の須藤信行教授と野崎剛弘特任講師らはその代表例だ。

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