「最近は20~30代の女性を中心に、顎関節症の患者が増えている」。ウエハマ歯科医院(茨城県土浦市)の上浜正院長は話す。若い女性の患者は男性の約2倍と多く、「女性は骨格や筋肉が弱く、顎関節症になりやすい」と指摘する。
顎関節症の症状は幾つかある。代表的なのが(1)口を開けようとすると顎が痛む(2)口を開けづらい(3)顎の関節から音が鳴る――の3つ。多くの人は自然に治るが、顎に負担をかけ続けると症状が悪くなる恐れがある。
かつてはかみ合わせの悪さが最大の原因とされた。だが最近は、顎に負担がかかる日常生活での動作や、精神的なストレスの積み重ねが原因となる人が多いという。特に現代社会ではパソコンや携帯電話を使うときに前傾姿勢になる。顎関節や筋肉に負担がかかりやすい。
また、生活が大きく変化する時期は、歯を食いしばる癖が出やすく、顎への負担が増す。歯並びの悪い子供は成長期に顎がゆがみ、かみ合わせの悪さから顎関節症になることもある。
顎関節症は幾つかの原因が関係する場合が多く、原因を1つに特定するのは難しい。上浜院長は「入れ歯があわずに顎関節症になる高齢者も増えている」と話す。年齢層を問わない生活習慣病と言えそうだ。
音が鳴るだけなら深刻ではなく、治療の必要はない。伸びをしたときに体のどこかがポキッと鳴るのと同じだ。
日本歯科大学病院の原節宏・顎関節症診療センター長は「関節は使い込むと音が出やすくなる。18歳以上で健康な人の3分の1は音がする」と話す。
ただ、音を鳴らすのが癖になって関節が変形し、症状が悪化するケースもある。耳のすぐそばで音が聞こえるのが耐えられず、精神的な重荷になることもある。上浜院長は「早期発見・早期治療が大切」と訴える。
まずは口の開閉が難しかったり、痛みが治まらなかったりしたら治療が必要と考えよう。